…正直言って、単純に驚くだろう。
つい数分前まで一緒にいた彼女が、国を越えて知名度のある、有名なモデルだったなんて。
誰が想像していた?
当然、御幸だって想像外だろう。

確かに留学する前から三年の間でも彼女は有名だった。
『二年に凄い綺麗な子がいる』と。
数人で見に行く奴もいたぐらいだ。
彼女はある意味有名だった。

今だって、変わらず綺麗だ。
学生時代も勿論綺麗だったけど、大人の綺麗さがある。
…だから、モデルと聞いて不思議ではない。
だが、…そんな芸能界に入ると言うような感じじゃないのは事実だ。
正直言って、興味がなさそうな感じもする。
だが、実際に彼女はそちら側の人間だ。

…まさか、と言うような考えもあるが、それは深く考え過ぎだろう。


「御幸」


どちらにしても、一つだけ言えることがある。


「手の届くうちに、ちゃんと捕まえないと。…いつかまた、逃げられるよ」


まだちゃんと、彼女の中にいるうちに。
手の届くうちに。
ちゃんと、捕まえておかないと。
本当に手の届かない人になってしまう。

それは、……お互いに。


「亮さん、そんなに世話焼きでしたっけ?」
「…先輩が心配してやってんのに」
「わかってますよ、亮さん。…どんなに泣き叫ばれたって、逃がしてやりませんよ。やっと見つけたんだ。綾華を手放すわけないです」


この言葉には、狂愛じみた何かが感じ取れるが、ちゃんとわかる。
御幸の彼女に対する想いが、ちゃんとした想いだって事は、俺たちがちゃんと知っている。
倉持たちに関しては、一番知っているだろう。

もしも彼女が本気で嫌がったら。
御幸と付き合うことを拒否したら。
こんなことを言っていても御幸は絶対に手を引くだろう。
彼女が好きだから。
―――愛しているから。

それもちゃんと、分かっている。
だからこそ、


「……頑張れ、御幸」


応援してやりたくなる。
手を差し伸べたくなるんだ。
この不器用な後輩を。

もしも彼女が御幸と再び付き合いたくない、と思っていたとしても。
俺たちは、後輩が可愛いから。
だからもしかしたら、彼女の気持ちを無視して、御幸の想いを先行してしまうかもしれない。

だが、願わくば。
彼女とちゃんと、二人の想いが交わって、ちゃんと、思いあって、結ばれることを願っている。


-Another side END-




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