倉持に対する初めの印象は最悪だった。
一年の時、倉持と前園くんと私は同じクラスだった。
その時は、元ヤンという噂を聞いていたから、本気で怖くって話もしなかった。
まあ、本当だったんだけど。
前園くんっていう、またこれも強面な二人で絡んでいたから余計に怖くって。
けれど、隣の席になった時、何も考えていないのかと思いきや、彼は彼なりに動いていたり、ときには的確な助言をしてくれたりして。
初めに野球部で仲良くなったのは、彼だった。
兄貴って感じで、学生時代もお世話になったな、と思い返す。
「マジ久しぶりだな、綾華」
「そうだね。6年ぶり、だね」
お母さんに『ちょっと話してくる』と一言かけて、近所の喫茶店に移動する。
そしてわたしはカフェラテ、倉持はコーヒーを頼む。
『コーヒー飲めるようになったんだね』と言えば、『うるせー』なんて言いながら一口口づける倉持。
たったそれだけのことなのに、大人になったんだと実感させられる。
長い時間、彼らと離れているんだと実感がわいてきて。
「ロンドンだっけ、良かったか?」
「うん。このまま移住しちゃいたいぐらい良かったよ」
「ヒャハっ!しちまえばよかったのによ!」
「…うん」
『ロンドンに移住すればよかったのに』
その言葉は何気なく出たものだろう。
けれど、少し、痛かった。
私の戻って来る場所は、もう彼らたちの元にはないってことを現わした言葉だったから。
…私はなんてわがままで優柔不断な奴なんだろう。
私から離れていったのに。
なのに、何欲張りな事を思っているの。
そう思っていれば、
「…なんてな」
「え?」
「嘘に決まってんだろ」
いつものような、ニカっとする笑い方じゃなくって、困ったような。
そんな笑い方で。
倉持には正直、似合わない。
『まさか本気で取ってないよな?』と言う倉持に、私はそのまさかです、と思いながらも、笑うだけで、ノーコメント。
まあ、倉持もこんなことを聞きに来たのではないはず。
なんだかんだで友達思いのいい奴な彼のことだ。
きっと、話題は、
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