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体育の授業で倒れた数日後、教室に入るとクラスの男の子から話し掛けられた。
「ねぇ、緑野さんってさ、鈴木のこと、どう思ってんの?」
「え…?」
「この前、助けられてときめいちゃった感じ?」
「え…、と…?」
「でも緑野さんって隣のクラスの及川とも噂あったし、実のところ、鈴木とどっちが本命なの?」
突然の質問に当惑する。
というか、そもそもこの男の子の名前って何だっけ…?同じクラスになって10ヶ月も経つ癖に、通常の人では考えられないような方向違いな疑問をあたしは抱いていた。
そんな状況のなか、鈴木くんが背後から文庫本で男の子の頭を軽く叩いて、会話の中に入ってきた。
「お前さぁ、緑野が "及川" って答えたら、責任取って俺を慰めてくれんの?」
そう言いながら、キスをしそうな勢いで鈴木くんは男の子の顎を引き寄せる(もちろん冗談半分だとは思うけど)。
まさか鈴木くんに捕まるとは思っていなかったのか、男の子は慌てて鈴木くんから離れ、誤魔化すように笑いながら、逃げていった。
「なんだよ…」
そう言う鈴木くんの表情がなぜか少し寂しそうで、キスをしたかったのだろうかと思ったら、思わず笑ってしまった。
「何笑ってんの、緑野」
「あ、鈴木くんもふざけてあんなことするんだと思って」
「まぁ…」
そう言いながら鈴木くんは少し照れた表情を見せた。
と思いきや、すぐにその表情は真剣な物へと変わる。
「あのさ、緑野…」
「ん…?」
「さっきの質問、なんて答えるつもりだった…?」
「え…?」
さっきの質問…
それは当然、あたしの本命は及川くんと鈴木くんのどちらなのかという質問に間違いない。
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