誰かのお姉さんヒロインと涼介
『(かわいい、弟)』
脳裏を過ったのは、私と同じハニーブラウンの髪と、私の蜂蜜色の目よりもちょっと濃い、メープルシロップみたいな瞳。私もあの子も何が起こってるのか分からなかった。だって、いきなり黒服の集団に囲まれる、幼稚園にも通い始めてすらいない私たちは、何も出来なかったのだから。私はそのまま連れ去られて、
「どうした、魘されてたぞ」
『…りょうすけ、にいさん』
「ん?」
ぎゅう、と同じ布団のなかで私を抱き締める涼介兄さん。でも分かってる、彼は私の本当の兄じゃないことも、私には実の弟が居ることも。でも、詳しいことは何一つ思い出せなくて、私は、黒服に連れ去られる私に手を伸ばすあの子の寂しそうな顔しか思い出せない。どうして私がここに居るのか、何も、分からない。
「…思い出そうとしているのか」
『おもい、だす…』
そうだ、思い出さなきゃ。泣き虫なあの子を悲しませるなんて私にはできない。だって、だいじな、
「いいんだ、何も思い出さなくて」
『、で、も…』
「おねえちゃあん!」
小さいあの子も、
『ないてる、の』
「姉さん、何処に、いるの…!」
成長したあの子も、
『わたしの、かわいい』
ああ、眠い。ごめんね、思い出せなくて。いつか必ず思い出すから、お願い、待ってて……
意識が薄れて、沈んでいくのを感じながら。私の口は勝手に動く。
『つ…、な……』
「何も思い出さなくて良い…」
温もりを感じるけれど、私の求めている温もりじゃない。
眠すぎて、何と言っているのかも分からない。
「ただ、傍にさえ居てくれれば…!」
そう嘆いた涼介兄さんの声は、私には届かなかった。
こんな感じの歪んだ涼介美味しくないですか私だけですかそうですか。
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8th.Mar.2013
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