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memo

男遊郭パロ

賑やかな吉原に似ている此処の商品は、“女”ではない。
正真正銘の“男”である。

『…で、今回の仕事は絵を描け、ですか』
「そー!まあ、そんじょそこらの絵師が描くものよりも君が描いた方がずっといいものになるしね」
『世界中の絵師に謝ってください、ハンジさん』

賑やかなそこを歩いていくのは、眼鏡をかけた性別不詳の人物と、絵を描くのに必要なのであろう道具を手にしている人形のように美しい女。
艶やかなそれを高い位置で結い上げており、彼女が歩くたびにゆらゆらと揺れるそれは、辺りにつるされている赤提灯に照らされて赤く染まる。

『で、誰を描くんでしたっけ』
「私の行きつけの店の、通称【花魁】だよ」
『男なのに花魁ですか』
「まあ、そのうちちゃんとした立場名みたいのがつくんじゃないかな」
『…まあ、いいです』

鼻を掠める香の香り。
何度かここに足を運んではいるし、香自体が苦手なわけではないが、様々な香の香りが混ざり合っている此処は少し息苦しい。
辺りを見回せば、赤い格子の向こうの空間に座っている、様々な男たち。
歩くたびに視線が突き刺さるのを感じた彼女は、小さくため息をついていた。

「ふふ、大人気じゃないか」
『人気?』
「君に買ってほしいんだろうよ、視線を向けてる彼らはね」
『…あまり好かないんですけどね、そういうのは』
「簡単に人の命を奪えてしまう君の台詞とは思えないな!」

けらけらと笑うハンジの言葉は喧騒の中に消えていき、誰かが気づいた様子もない。
それが分かっているからか、彼女は特に咎めることもせずに歩き続ける。

『仕事は選んでますよ?罪なき人は殺してません』
「依頼人のもターゲットのも、全て調べちゃうもんなあ」

君の前では個人情報なんてへったくれもない、と笑うハンジの足が止まる。
それに伴うように女の足も止まった。

「この店だよ。ここじゃ一番大きい遊郭だ」
『…“自由の翼”、ですか』
「前の店主が随分と皮肉な人間だったらしいね」

こんなところで自由を語るとは、と目を細めた彼女を連れ立って店内へと足を踏み入れるハンジ。
その店の格子の向こうにいる男たちは期待に胸を膨らませはしていたが、その期待はもうじき砕けることになる。
何故なら女は、“絵師”として、この店の【花魁】を描くためだけに、ここにやってきたのだから。


***
ついノリで…夢主とハンジは友人。
ハンジを通して仕事の依頼をされることもあるという裏設定。

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19th.Jul.2013


 
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