▼ 二人の姫3
「――で。レイはいいのか? 挨拶にいかなくて」
「お昼寝優先に決まってる。どうせヨナの誕生日までには顔合わせるし、問題ない」
「そーかい」
そう言って、今度こそ背を向けて歩き出した。
後ろからギンもついてくる。
「今日はどこで日向ぼっこしよう……?」
お昼寝じゃないのかって? 結果はどっちも同じだ。
人通りがなくて日が照って暖かくて静かな回廊を見つけ、躊躇いもなく寝転がって丸くなる。
寝そべったギンに抱きつくようにして眠るのが気持ちいいのだ。
(イル陛下は好きじゃない……。優しさと甘さの区別のつかない王様だから……)
サラは、あの王様のことを話すとき、いつも悲しそうに笑っていた。
高華国を旅した。そこで、見てきたものがある。
だからと言って、嫌いでもないけど。
だけど、ヨナに姉上と呼ばれると少し嫌だと思うのだ。
私はあの王様の娘には、なりたくない。
「む……ギン、大丈夫だよ」
レイの心を察してか、頭をもたげ、鼻を頬に擦り寄せるギンに微かに微笑んだ。
「……ねむいね、ギン。……おやす……み…………」
ウトウトとしながら、それだけ呟いて、直前までの思考などなかったかのように、今度こそ幸せそうに夢の中に旅だった。
やっぱり、日向でお昼寝、気持ちいい……。
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