▼ 二人の姫2
「ん……そういえば。ヨナ、良かったの?」
「なにが?」
「式典。もう、終わってる頃」
「えっ、嘘!?」
ヨナが慌てる横で淡々と事実を告げる。
「ほんと。だってほら。王様、ここにいる」
「父上! あの、私……ごめんなさい……父上……」
「あはは、大丈夫。ヨナがわざわざ出る必要はないさ。その代わり、次のヨナの誕生日の祝いの席にだけは出てもらうよ」
「えぇ、もちろん! ところで父上。私の髪、変じゃない?」
「変じゃないとも。ヨナの美しさはどんな宝石も敵わんさ」
相変わらずの娘溺愛発言だ、とレイは心のなかで突っ込む。
「顔はね。姉上には負けるけど私もそこそこ可愛く生まれたと思うわ。
でもね、父上。この髪! どうしてこう赤毛で癖っ毛なのかしら。亡くなられた母上はサラサラの黒髪だったのに」
ちっともまとまらないー!と、嘆くヨナに首をかしげる。
「一つに結えば楽」
「そーいうことじゃないの!」
邪魔にならないようになら幾らでも纏められると思ったがそうではないらしい。
「む……よく分からない」
「まぁまぁヨナ落ち着きなさい。ヨナの髪も素敵じゃないか。なあハク」
「ええ、イル陛下。姫様のお髪が変などと誰が申しましょうか。敢えて申し上げるなら……
ー頭(のーみそ)が変ですね」
「お黙り下僕」
相変わらず二人は仲がいいなと思いつつレイは背を向けた。
そーいえば、私。散歩してたんだった。
「おい、どこに行くんだよレイ」
「散歩。ギンとどこかでお昼寝する予定」
振り返ると、片手でヨナをいなしながら、こちらに視線を向けるハクと目があったので、端的に答える。
木の上か回廊の日が照って暖かいところが理想的だ。
護衛にはギンがいるので問題ない。
ハクより強いし。ギンって。
「それでも王族かよ……ったく。……と、そーいえば、いいんですか? 姫様。可愛くしとかなくて」
「?」
「お着きになったみたいですよ、スウォン様」
その言葉を聞いた瞬間、ヨナの目の色が変わる。
「それを早く言いなさいっ!」
駆けていったヨナを見送りながら、思った。
…………元気だなぁ、ヨナ。
私だったら無駄に走りたくない。
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