『昨夜未明、廃墟のビルに侵入した池袋の某私立校に通う女子高校生が、飛び降り自殺を図った模様です。発見された時には――』


ニュースで自殺スポットとして有名な廃ビルが映った。名前は公表されず、女子高生とだけ明かされた。

私は心の中でため息を吐いた。またひとつ、大切な命が消えてしまったのか。

目の前に座る男は気にする素振りを見せず、私が作ったフレンチトーストを食べながら褒め称える。

汚いから止めろと言って、ベランダに向かった。


(彼女が見た最後の風景はなんだったのだろうか)


名前も顔も知らないであろう女子高生の心中を想像して、くだらない、取るに足らないちゃちな黙祷を捧げる。


「セルティ!ちょっと来て!」


慌てた様子の新羅に名前を呼ばれて、ベランダから離れてテーブルの方へ戻る。彼はタッチ型の携帯電話を握って、珍しく動揺していた。


「タマちゃんが、タマちゃんが…死んだって……!」

(タマ、が…?)


彼女の笑った顔、憎むように睨み付ける眼光、すやすやと穏やかに眠る姿。すべてごちゃごちゃになって、崩れる。


「さ、さっき、臨也からメールが来たんだけど、タマちゃんが飛び降り自殺して……死んだって」

〔臨也から…?なんでアイツが知っているんだ!?ていうか、タマとアイツは会っていたのか!?〕

「分からない……。けど、恐らく会ったんだよ。それで…タマちゃんは色々な事実を知って……」

〔そんな……〕


言葉が出なかった。何故、彼女が自殺したのか。もしかして、あの臨也がべらべらと喋ったのかもしれない。


「あ、待ってセルティ!またメールが来た」

〔今度はなんだ?〕

「タマを殺したのは……、俺だ…?」

〔とうとう人を殺したのか……〕

「まあ、間接的だけどね。ああーでも、あのタマちゃんが死んじゃうってね……」


やっぱり解剖しておけばよかったとかなんとかブツブツ呟く新羅。コイツには死者を悼む気持ちはないのか…。

呆れながら、私は静雄にメールを送ろうと文面を書き出そうと思ったが、躊躇した。第一、あの不死身であるタマが死んだという事実がはっきりしていない。ソースが臨也だから尚更胡散臭い。


(タマ…お前は世界を見つけられなかったのだな)

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