ある情報屋の悪夢
いつの間にか寝落ちしていたようで、俺はよく分からないところに居た。真っ白な部屋に、真っ黒な服を着た俺。なんとも可笑しいコントラストだ!
周りを見渡すと、壁に溶け込んでしまいそうなくらい真っ白なワンピースを着たタマがこちらを見ていた。
「やあ、死後の世界はどうかい?」
「……す」
「…なんだって?」
「ころす、……ころすころすころすころす、ころす…!」
「これまた過激な歓迎だな」
「ふっ、っう…しね……!しんじゃえ!」
タマが降り下ろす度、俺の腹部から血飛沫が舞う。勿論、夢だから全然痛くない。しかし変な感覚だ。血は出るが、痛みはないなんて。
「タマ」
「っ!やめ、やめて……もう…やだ。ころさなきゃ、殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ…!」
血塗れになった手で、滑りそうになりながらも懸命に刺し続けるタマ。顔は涙で濡れている。こんなにボロ泣きするなら、やらなきゃいいのに。
「殺す……!」
タマが大きく振りかざした瞬間、目が覚めた。手が汗をかいている。変な、夢だった。
あまりにもリアルな夢を思い出して苦笑いが出た。どうして、今更思い出したのだろうか。懐かしくて?寂しくて? ……憎くて?
「……どこに行ったんだろうねえ、俺の駒は」
テーブルに置かれた写真を手に取り、じっと見て破った。タマがto羅丸の総長――六条千景といる写真。
「はははははっ!! ……駒は駒らしく、俺に動かされればいいんだ」
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