「へえー記憶喪失!」
「ホントーにあるんスねえ!!」
「だから俺達が分からない、と」
どうも、私こと猫柳タマは、只今ワゴン車の中で尋問中です……。ううう、大人に囲まれてるよ…!
「あーだから最近イザイザはイライラしてるんだねえ」
「イザイザって誰ですか?」
「……教えていいのかな、ドタチン」
「早めに教えておいた方がいい」
よっぽどの危険人物なのかな。真剣な顔の、か、狩沢さんが口を開く。
「イザイザは、折原臨也のことよ」
「おりはらいざや…?」
「猫柳、お前が“昔”盲従していた男の名前だ」
「あの……おりはらって、木を折るの折るに、原っぱの原ですか!?」
「あ、ああ」
折原いざや……。もう少しで分かるのに…!苛立つ私に、狩沢さんは優しく手を握ってくれた。
「そんなに無理しなくても大丈夫。ゆっくり思い出していこう?」
「狩沢さん…。でも、私、静雄、さんの記憶しか思い出してないんです」
「えー!シズシズを!?」
「は、はい」
「折原にはもう絡むな。静雄と出来るだけ一緒に行動しろ。アイツと関わると、ロクなことがない」
「は、はあ」
約束だよ!と狩沢さんと指切りげんまんした。私をドタチンさん(本当は門田さんだけど)はちょっと心配そうに見てた。
「大丈夫です。私、もう静雄ん家に住んでますから」
「「えぇ!?」」
「なんだと…?」
唖然とする三人に私は「ご忠告ありがとうございましたー!」と挨拶してワゴンから出た。
「へえ……生きてたんだ。流石だなぁ」
それを偶然、黒いファーコートを着た男が見ていたことに気づかずに。
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