濡れた髪のまま布団に寝転ぼうとしたら、頭をガシッと掴まれ、ずるずる引きずられていく。
「な、なんですかー!」
「髪乾かせ」
「……面倒くさい」
「つべこべ言わずにさっさとやれ」
「わっ、う、おお!?」
なんとなんと、あのへーわさんが私の髪を乾かしている!
でもちょっと下手く……いやめちゃくちゃきもちいーですよ。はい。熱いけど。
「ほら、終わった」
「ありがとうございまーす!じゃあ私も乾かしてあげますね!」
「ああ?いらねえ、」
「まあまあ遠慮せずに!」
ゴーという音だけが部屋に響く。金色のふさふさした髪を、ドライヤーの風がかき分けていく。
お世辞にも綺麗とは言えないくらいちょっと傷んでいるけど、私は結構好きかも。
そんなことをぼんやり考えながら乾かしていたら、あっという間に終わってしまった。
「はいどーぞ」
「ん。結構上手いな」
「へっへーん、タマちゃんは何でもできるんですよ!」
「寝るぞ」
「あっ、ちょっと突っ込まないんですかっ!」
もぞもぞ布団に入っていくへーわさんに続いて、私ももぞもぞ入る。うひゃーへーわさんの匂いだー。「そういえばよ、その、へーわさんっていうの止めろ」
「わじまさん?」
「違う人だろ、それ。普通に下の名前でいいから」
「しずお?」
名前を呼んだら、へーわさん……じゃなくて静雄が「おう」と返事をした。私はまた呼んだ。眠たそうな声色でもう寝ろって言われた。
温かい体温。私は静雄の手を握りしめていた。
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