金髪でバーテン服を着た彼―――平和島静雄は、さっきから誰かに見られているような気がした。
なんとなく気持ち悪いので、少し入り組んだ路地裏に入る。
コツ、コツ、コツ、コツ
ペタ、ペタ、……ズルッ、ペタペタ
(チッ、しつこい奴だな……仕方ねえ)
そろそろ堪忍袋の緒が切れそうな静雄は、後ろを振り返ることにした。少女がいた。
「…………わわっ!」
慌てて物陰に隠れ、ひょこっと顔を出す。静雄は一連の動作で、どんくさい奴だと認識した。
「おい、さっきからなんで尾けてたんだよ」
「……う……あの、」
もそもそと物陰から出てくる少女は、全身が黒ずくめで、ある男を彷彿とさせた。
「えっと……そのぉ」
「おう」
「単刀直入に……申し上げますと」
死んでいただけませんか?
「は?」
そう言った瞬間、さっきのイメージがぶっ飛ぶようなスピードで、静雄の胸元に飛び込んできた。
これが、平和島静雄と少女―――猫柳タマのファースト・コンタクトだった。
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