目を開けると、真っ白な天井があった。私の左目は見えない。触ったら布のような感触があった。

私は何をしているんだろう?


「あ、起きたんだ。気分はどうかい?」

「……大丈夫ですけど。あの、どちら様ですか?」

「……これは、これは。いくら僕が嫌いだからって、そんな嫌がらせはないだろう?」

「いえ……本当に知りません」


目の前の白衣を着た男の人は血相を変え、誰かの名前を叫びながら出ていった。おかしなひと。


【本当に分からないのか!?】

「さっきから言ってるじゃないですか」

「うーん、面倒なことになったね。これは記憶喪失ってやつかな。脳に衝撃はなかったはずなのに」

【本当にあるんだな…】


まさか自分が記憶喪失になるなんて。白衣の男性は岸谷新羅と名乗った。一方、パッドの様な物を使うライダースーツ姿の女性は、セルティと名乗った。

そういえば、私は自分の名前すら覚えていない。弱ったな。


「君の名前は、猫柳タマ。確か、来良に通ってるよね」

【なんでお前はそこまで知っているんだ】

「え?セルティったら焼きもち妬いてるの?痛ッ、彼女の身体が気になって、身元を調べただけさ…!」

「じゃあ、私の家の住所まで知ってますよね?」

「もちろん。今から探して来るから待ってて」


厄介なことになった。何故私は記憶喪失になってしまったのか。考えたら、頭が痛くなった。するとセルティさんが優しく撫でてくれた。


【こう言うのもあれだが、今のタマの方が好きだな】

「…前の私って、そんなに悪い人でしたか」

【いや、素直なところは変わってないよ】


セルティさんは、ヘルメットをかぶっていて表情は分からないけど、ふわりと優しく笑ったような気がする。

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