「サイモン?」
「お嬢ちゃんを連れてきたり、仲裁している奴さ。アイツの故郷、あんたらがやる喧嘩よりひでえことを、同年代の子供がするんだ」
板前さんは私を強い眼差しで見据えながら、言葉を紡ぐ。まるで私の中を見られているようで、ちょっと、うん。
「とりあえず、今夜は安い寿司だが、食っていけ」
「わあ、美味しそう!あー…でも……」
「学生に優しい値段だからよ。安心して食べろ」
その言葉を聞いて、私は箸を手に取った。まだ臨也さんからバイト代をもらってないから、お財布が冬なのだ。貯金なら郵便局にあるけど、もう時間外だし。
会計をすませた私は、板前さんに「ごちそうさまでした。また来ます」と言って出た。
「サイモンさん、美味しかったです」
「オーソレはヨカッタ!オ腹ガスイテタラ、背中トくっついチャウカラね!」
「ふふ、ごちそうさまでした」
今日は誰かに心配される日だった。うっとうしいって思ってたけど、ずっと殻に閉じこもっていた私は、どこかで意地を張っていたのかもしれない。
でも、今日でその殻は、あの首無しライダーによって、白衣を着た怪しげな男、池袋最強のムカつく男によって、壊された。
ふわふわ気分で歩いていたら、前方から来る人に気づいた。臨也さんだ。
「おや、タマちゃん。こんな夜遅くに出歩いていたら、危ないよ?」
「臨也さん…」
放課後の教室で遭遇した少年――紀田君の言葉を思い出す。<近づかない方がいいっすよ>
その臨也さんは、どこか苛立っているようだった。でも、この人が救ってくれたように、私も――
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