岸谷家を出ると、外は真っ暗だった。まだクリーニング屋さん、開いてるかな?全速力で走りながらぐるぐる考えて、た、ら!?


「わあ、すいまっせん!」

「ご、ごめんなさい!」


黒髪の地味そうな少年とぶつかってしまった。ていうか、私は立っているのに、男の子は尻餅をついている…。



「だ、大丈夫?」

「すいません、大丈夫です」

「! ほんとごめんね、じゃ!!」


びっくりしたー。最近臨也さんが目をつけている竜ヶ峰君じゃん!私は顔がバレないうちにそそくさと逃げ出した。

そんなのことをしても、顔はもうバレていることを知らずに。


「あの人、屋上にいた……」



家に帰ってクリーニング屋さんに行ったら、もう閉まっていた。タマちゃんマジショック…。

とぼとぼ歩いていたら、後ろから声をかけられた。あ、へーわさんと喧嘩している時に仲裁してきた外国人の板前さんだ。


「オー静雄ト喧嘩シテタ子ー!寿司喰ッてイカナーイ?」

「ごめんなさい、今は財布が寒いんです…」

「ンーツケてオクから大丈夫ネ〜」

「えっ、ちょっと!?」


強制的にカウンターに座らされた私。板前さんは中にいたもう一人の外国人の板前さんに耳打ちをしていた。


「ああ、お嬢ちゃんが平和島の旦那と喧嘩していた子か」

「は、はあ…?」

「ま、喧嘩するのはいいさ。ただ、平和島の旦那が手加減していることは、頭に入れておけ」

「……はい。わかりました」


手加減。つまり相手にもならない、か。確かに臨也さんと喧嘩している時は、もっと自販機やポストが飛んでるし……。

落ち込んでいる私に、板前さんは「だがな、サイモンの前ではするなよ」と言ってきた。

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