「うっわーここ、ほんとに高いねえ」
「そうですね」
連れて来られたのは自殺スポットで有名な廃ビルの屋上。あと一歩、踏み出せば私は死ぬ場所まで来ていました。
「奈倉さん…じゃなくて、あなたの名前はなんですか」
「名乗るのは自分からじゃないのかい?」
「……猫柳タマ。ていうか、知ってるんじゃないんですか」
「バレたか。俺は折原臨也。素敵で無敵な情報屋さ」
「折原さんは、自殺する気がないですよね」
そう言うと、臨也さんは肩を揺らしてけらけら笑いました。あの時は結構イラッとしましたね!あ、セルティさんわかりますか?今はむしろ眼福なんで…って岸谷さんの方が変態です!
「正解!景品は何がいいかな?」
「……愛してほしいです」
「それは無理かなあ?だって、俺は全人類を愛さなきゃいけないからさ。君一人に愛を注ぐわけにはいかない」
「それは…愛じゃありません」
「そうかなあ?唯一の肉親の母親にさえ見捨てられ、愛を知らずに生きてきたタマさんには分からないよ?」
「うるさい!!お母さんは…お母さんは…!」
「可哀想に。まだ救ってくれると信じているのかい?いや、巣食われているね。ところで、いつになったら落ちるの?怖いのかい?手も震えているし、止めたら?」
「黙ってください!怖くない!私は死にます!!」
そう言って、私は手を離しました。落下しながら今までの人生が走馬灯のように思い出されました。
あと、母へ、いい子になれなくてごめんなさいって謝っていましたね。
「っ!?」
ああ、思い出しましたよ。あの感触、PHS、ヘルメットの女。セルティさん、あなただったんですね?私を助けたのは。その時、あなたは言いましたよね。世界は貴方が思っているより酷いものじゃない、って。
「ありがとうございました。でも、あなたは嫌いです」
「ちょっとタマちゃん!?」
「私も、私も、セルティさんになりたかった!」
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