【殺那がからかわれる理由】






「…葵様、一度お聞きしたかったことがあります」

「改まってどうしました、殺那」

「なぜ俺ばかりからかわれるのですか」



やたら聞いてはいけないことを聞くような面持ちの殺那が口を開いたと思ったら、尋ねられた内容は当然と言うべきか今更と言うべきか。



「急にどうしたんです」

「いえ、どうも葵様にからかわれるのは俺の係のようになってしまっている気がしたので」

「係でしょう」



あまりにサラリと答えられてしまった。
ここで当初の質問に戻る。



「…なぜですか」

「嫌でしたか?」

「いえ!そういうわけ…では…ないかと…」

「なぜ語尾が消えていくのです」

「からかわれるのが好きだと大声で言う男もどうかと思ったんです」

「確かにそうですね。やはり私が殺那にちょっかいをかけるのは良いことではないのでしょう」

「え、」

「殺那は私と話すのが嫌いなのですね」

「ちが、違います!絶対違います!」

「冗談です」



しらっと言われたその一言に身体中の力が抜けた殺那。
そんなこと一向に気にせずお茶を飲む葵。



「殺那の反応が面白いんですよ」

「誉められている気がしません…空や七猫でも良いでしょう」

「あの二人にこんなことを言ったらどうなると思っているのです」





【空の場合】


(空は私と話すのが嫌いなのですね)

(あ…っ葵様ああああ!違いますうそんなことないですう!空の何がいけませんでしたか葵様ああ!話さないなんて嫌ですごめんなさいいいうわーん!!)




「…あいつの反応は手に取るように分かりますね」

「悪いことをしていないのに謝るのが空ですからね」



【七猫の場合】


(七猫は私と話すのが嫌いなのですね)

(!)



「…七猫はこの先が想像出来ないのですが」

「七猫は違うと言うことが私に伝わるまでずっとくっついてくるんです」

「ああ…なるほど」



こう見ると確かに、からかってまともな反応を返すのは殺那だけだと分かる。



「…それなら当分、葵様のからかわれ係は俺なんですね」

「嫌ならやめても良いんですよ?」

「やめる方法なんてないでしょう」



そう言って笑ったけれど、多分やめる方法があったとしても自分はやめないのだろうな、と思う殺那だった。





(いえ、やはりからかうのは一日に三回までにしてください……)

(努力します)




fin.

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