「あ、『28歳年収500万円地方出身の旧家次男と結婚』だわ。お祝い金ちょうだい」

「何やパッとせぇへん相手やねえ……うわ、『暑さに苛立った連続放火魔に持ち家を半焼させられる』やわ。家焼けてもた」


「…すごい人生ゲームですね」
















【肝だめしの怪】




















お盆と正月になると死神達へ出る帰省休暇。

現世でのお盆は戻ってきた魂魄を狙って虚が大量に出るため、実際に死神達にとっての「お盆休暇」は夏を過ぎた秋の頃。



瀞霊廷内の家に帰るもの、流魂街の家に帰るもの、そんな死神達が多い中。
流魂街に帰る家のない乱菊・葵・ギンにとっては単なる休暇扱いになる。







「次、葵は―…『カジノで黒の六番を狙ったつもりが赤の六番に間違われたせいで大当たり』ですって。うわすごい大金」

「相変わらず運がええねえ」

「この人生ゲームどうしたんですか?」

「浦原がくれたわ。何でも『リアル人生ゲーム』とかって言うらしいんだけど、あんまり人気なかったみたいよ」

「でしょうね…」



暇になると三人でやるのが室内ゲーム。
その中でも特に時間のかかる人生ゲームはやるたびに乱菊が子沢山になり、ギンが何らかの不幸を巻き起こし、葵が驚異的な運の良さで大富豪になる。




「ちょっギン!『放火魔の火事が火移りして資産全焼』になったじゃない!」

「僕のせいやあらへんもん」

「てかあんたの家は半焼で何でウチが全焼なのよ!」

「木の家にでも住んどったんちゃうん」



やれやれ、といつもの喧嘩を始めそうな二人を眺めながら葵がお茶を飲んだとき。
高い声の放送がかかった。




…――瀞霊廷内の死神の方へ、死神慰安協会から連絡です。ただ今より敷地内の並木道にて肝だめしを行います。どうぞふるってご参加下さい――…



その放送にピタッと乱菊の動きが止まる。



「ああ、何や慰安協会が催しもんするっちゅうのは聞いとったけど。肝だめしやったんやね」

「そうだったんですね。……あの、乱菊さんが非常にテキパキ人生ゲームを片づけてるんですけど」

「…行く気やで、こいつ」



見るとゲームを片づけるだけでなくばっちりロウソクの準備をしている乱菊。
ギンと葵が頷きあってそーっと部屋から出ようとした、けれど。





「ど・こ・い・く・の?」





ギクッ


いつもより1オクターブ高い声で乱菊に背後から呼び止められた。



「ど、どこも行かへんよ?ちょっとアレや、なあ葵」

「…はい、お茶を片づけてきます」

「なら葵だけで良いわね、ギンはここに残りなさい」

「なして!?」

「人質よ。葵はギンを見捨ててまで逃げられないもの」



逃げ出そうとしたことはすでにバレていた。
ロウソクから何かの御札まで準備済みの乱菊に観念して。






「…分かりました、お茶を片づけて来ますから少し待って下さい」

「早くね!」























良い具合に太陽が沈んで少しずつ辺りが薄暗くなってきている中、三人で瀞霊廷の隅にある並木道へ向かった。



「ここですね」

「…なあ、場所って桜並木やったよな?」



聞いてしまうのも無理はなく、迫ってきた闇で並木道がさもおどろおどろしい森のようになっている。
しかもあちこちにお手製の作られたリアルな墓がポツポツと。


 

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