縁側にて、穏やかな日差しを生む太陽へ一枚のカードをかざし、不思議そうにそれを見つめる葵。
恐らく偽物の金色である表面には何桁もの数字が羅列している。



「これで本当に買い物が出来るんでしょうか…」

「あー、ギンも同じこと言ってたわね。
『くれじっとって何の略やー』って。」



畳にごろり転がって、どこから手に入れてきたのか山のように積んだ雑誌をめくっている乱菊が答えてくれた。
そういえば現世へ息抜きに行くことが決まってからずいぶんとそうしているなあと思い。



「ファッション雑誌ですね、いい服が見つからないんですか?」

「それが『年代別定番ファッション』って銘打ってる雑誌を読み漁ってるんだけど、良くて五十代までしか載ってないのよ。
百代二百代は無いのかしら?」

「乱菊、外見年齢でいいんですよ、外見年齢で。」










*おとなの遊び方*









総隊長から現世行きの許可が降りたのが一週間前の話。
お盆と正月のあの帰省休暇も例によってここに残っている三人へ、零番隊の騒動も落ち着いたことだしと、半日の行楽が認められた。

ただあくまでお忍びであるため、他言は許されていない。





「明日には現世行きだってのに困るわ、全然いい服がないんだもの。
場所はあっさり決まったのに。」

「場所…ああ、行き先ですか。」



あれはあっさりでしたね、と思い出す。










(あーもう観光名所ばかり挙げててもきりないわね)

(日本全てにありますからね…)



日本地図を前にして、三人が悩み始めてから数時間後のことだった。
半日過ごせると言ってもそれは観光にはあまりに足りない時間だし、その土地柄に熟知した者もいなかった。



(京都はギンが嫌だって言うし)

(せやかて方言的な意味で僕の出身地絶対ここやで。
うっかり嫌な前世の記憶蘇ったらどうしてくれるん)

(しかし適当に決めると言っても…)

(適当でええなら出来るわ。
ぴったりの役おるし)



ちょお貸し、と畳に広げていた日本地図を持ち上げて、すたすた隣の部屋へ入り襖を閉めた。





(イヅルー、これやるわ)

(…え、これダーツの矢じゃ…)

(うん。
僕これ地図持っとるからちょお好きなとこ投げてや)

(はい!?何の企画ですか!?
というより外して隊長に当てたりしたら…)

(ええからさっさと投げや、あ、神鑓が何や伸びたい言うて――)

(う、うわああああ!!)



決死の覚悟の悲鳴が響いた数秒後、行き先決まったでーと朗らかにギンが戻ってきた。

襖一枚向こうの犠牲を考えると、決まった行き先に反発できる人間はいないんじゃないかと今でも葵は思う。



 

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