「良いに決まってるわ。隊長が決めたんだから」

「ですが、私はまだ子供ですし…」

「隊長だって若くしてここに来たのよ、年齢と実力は時々比例しないのそれに隊長が自分で跡継ぎを決めたなんて世界がひっくり返るくらいのことよ。だからよけいな心配なんてしないでね?」



その言葉でいくらか肩にのっていた何かが落ちたような気がした。
まだまだ分からないことはたくさんあるが、とりあえず自分がいても良い場所が分かるだけでもずっと安心する。


そんなとき、ところで、と四席が切り出した。




「葵ちゃんは、隊長とまともに会話とかした?」



呼ばれ慣れない名前に少し気持ちが戸惑うも、すぐに霧散する。

まともな会話。

ともすればそれは意志疎通のできた会話ということだろうか。


葵の中で『あの』女隊長との会話はここへ勧誘されたときのみだから、それは普通とは扱わないことにして。





「…いえ、まだありません」

「そうよねえ…やっぱり。うちの隊長って少し、いやかなり難しい人だからあまり気にしない方が良いわ」

「難しい?」

「そう。頑固だとか気難しいとかそういうんじゃなくて、本当単純に『難しい』のよ。予測がまず出来ないから」



それを聞いた葵の頭の中で隊に戻るなりさっさと外を眺めに行ってしまった隊長の姿が思い出された。

まだここの隊長という位の人たちがどんな働きをするのかは分からないが、あれは確かに分かりやすい行動とは言えない。



「それでも変に惹かれちゃうところがあるから根は凄い人なんだけど…隊長のこと理解してるのはあの副隊長くらいね。『隊長の 扱い困れば 副隊長』っていう標語があるからウチは」

「…中々楽しそうな場所ですね」



どう反応したものか迷った挙げ句の葵の苦し紛れの感想も四席は快活に笑い、そのまましばらく廷内を案内されてその日は終わった。








深夜、教えられた通り隊室の隣にある執務室の畳に布団をしいて潜り込む。
開け放した外の縁側へと続く障子の向こうに、外で生活していた時とは違う狭まった夜空が見えた。


いつも三人で寝転んで見ていた星。


昼間はただひたすらに考えないようにしていたことが頭をもたげる。



 

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