「七猫、無事でしたか?」
「ん、うん」
少し息が荒いが、まだ間に合った範疇だと判断した。
ほっとしつつもその頭と背を撫でて抱いてやる。
「こちらに近づいて来ていたんですね」
「葵の匂いがしたからこっち来たけど行き止まった…四楓院のやろー…」
「空にはきちんと言っておきますから、ぶつかるのは駄目ですよ。前髪が危ないんでしょう?」
「……うん」
ようやく落ち着いた様子が見えたので、視線で戻ろうと告げたのを殺那も理解した。
「上へ戻るぞ、いい加減お前も葵様から離れろ」
「やだ」
「……どうしてお前らはこういう時だけ意固地に……」
「まあまあ」
――――――……
「かーんぱーいっ!」
相変わらずの乱菊の音頭で、全く厳かではない酒宴が始まった。
復活のお祝いの時のようにあえて広すぎない部屋で、思い思いに円を描いて座りながら好きに飲み始める。
「いやあー美味しいお酒とご飯がもらえるなんて役得だよねえ」
「京楽隊長、明日も執務なんですから飲みすぎは控えてください」
「七緒ーあんたも飲みなさいってのー!!」
「うわっちょっ」
「まあ兄貴みたいに総元締めとかじゃない限り、俺達は稽古とか、八十番地区の見回りとかしかしないっつーか」
「へえ、そないなことまでするんや」
「あの辺は物騒っちゃ物騒だからな。俺はさっさと十一番隊とかに修行として入りたいんだけどさ」
「わーい来て来て!ね!剣ちゃん!」
「おう。女は少ねえがな」
「げ!マジ!?」
「そこ判断基準なんやな」
「葵様ー!空酔っひゃいましたー!」
「そうですね、ジュースですけどね」
「猫ちゃん!猫ちゃんどこれふかー!」
「すでに避難済みですよ」
もはやベロベロな空をまだまだいける乱菊に頼んで、今回もそっと縁側に出た。
風は暖かい。
「本当に全てはあっという間ですね」
縁側の隅に腰を落ち着けた頃、後ろから静かに声がした。
振り返ると、自分と同じように後ろに座っている殺那を見つける。
「そうですね。……隣に座ってはくれないんですか?」
「いえそんな」
「私は誰かと並んで座るのが好きなんです」
「……そう仰るのでしたら」
そうしてそっと隣に並んで座った。
二人とも正座なのが少し笑えてしまった。
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