「あ、え、えっと親父が一度元隊長さんと会いたいってよ」
「分かった。……何を取り乱してるんだお前は」
「別にき、気のせいだって。あ、そっちの銀髪の人達も兄弟?」
「「違う」」
「即答ですね…」
「気が合うんだか合わないんだか…」
それからいくつか劫が殺那へ話をし、酒宴は夜に行うことを知らされた。
それまでは広い屋敷内を自由に案内するとも。
「確かに十一番隊とか京楽達は仕事終わってからじゃなきゃ来れないものね」
「わーい殺ちゃん家のお宅訪問!」
「俺達の屋敷は色々見所あるから、多分暇しねーよな。兄貴」
「そうだな。しかしここは対侵入者用の仕掛けもかなり多く施されていますから、くれぐれも大きく動いたり怪しい動作はしないように……」
ぽちっ
言い終わるか終わらないかの狭間で、怪しさ満点な音が響いた。
全員がゆっくりとその音の方を見やる。
ほぼ全員の予想通り、一部分だけ色の違う廊下を踏み抜いた空がそこに立っていた。
「……あれ?殺ちゃん私何か踏んだよ?」
「どうしてお前は毎度のことながらそうやって問題事を…!」
「空、そこから離れてください」
「え、わっ、うわあ!」
空が伸ばされた葵の手を掴んだ瞬間、足元の床板が抜け落ちた。
即座に片足を横にずらして飛び移ったため、落下の事態は免れた。
「び、びびびっくりしました…!」
「空はあまり動かない方が…」
ガコンッ
「!」
誰もがそれだけで終わりと思った矢先、時間差で横にいた七猫の足場が抜け落ちた。
空をしがみつかせていたために葵が手を伸ばすことも出来ず、あっという間に奈落に飲み込まれる。
「七猫!」
「猫ちゃん!」
すぐに駆け寄り生まれた穴をのぞき込むと、屋敷の中に作られた物とは思えないほどに深く暗かった。
「殺那、この仕掛けの先は?」
「恐らく地下の最深部行きです。俺達は対侵入者をからくりで殺したりはしませんので、一応命に支障はありません」
「猫ちゃーん!」
穴に叫び続ける空の声が響くも、返事はない。
試しに葵も呼んでみたが同じことだった。
「これはもしかすると寝ていますね…」
「もしかしなくとも寝てますね…地下は暗いですから」
「え、そんな認識で大丈夫なの?」
「落ちている時に引っ掻いたような音がしましたから、恐らく刀の爪を立てて減速したのでしょう。恐らくは無事です」
「俺と葵様は地下まで七猫を拾いに行ってくる、屋敷の案内はお前に任せた」
「ああ分かった兄貴」
「ご、ごめんなさい葵様…!」
「大丈夫ですよ、あとから追いつきますから先に行っていてください。あ、ですがギンと乱菊さん」
「「ん?」」
「空の両手を片方ずつ持って連れて行ってください」
「了解よ」
「死んでも離さんわ」
「わあー」
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