【『あの日常』の詳細】






「猫ちゃ〜ん♪」



四楓院が猫なで声で近づいてきたら警戒の準備。
とりあえず爪を立てて逃げられる体勢にする。

ここの隊長である葵がいない時にばかり来るのだからタチが悪い。



「やだなーそんなに驚いて。何もしないって…ばっ!」



最後の一声と一緒に高速で振り上げられたハサミをかわして今まで寝ていた毛布を投げつける。
一瞬四楓院の視界が遮られた隙に急いで隊室を飛び出した。



「待てー猫ちゃん!」

「早っ」



後ろからすぐにハサミを持ったまま追いかけてきた。
俺の前髪を切るためならハサミだろうが刀だろうが包丁だろうが構わないらしい。(そう言って前は摩製石器を持っていた)(馬鹿だと思う)





「そんな前髪伸ばしてたら転ぶでしょー!」

「転ばないし」

「目に入るでしょー!」

「入らないし」

「葵様だってハッキリ見えないよー!」

「…………」



最後の一言に何か揺らいだ。
人波を走るなと言われているから屋根に移っても四楓院のスピードは全く衰えない。



「前髪パッツンとかにしないからー!ちゃんと上手く切るからー!」

「そう言う問題じゃない」



大体万が一億が一の確率で切ることになっても葵以外は誰だって嫌だ。
そう思って最初は普通に逃げてられるけど。





――2時間経過



「猫ちゃん待てー!」

「…も、無理…」



さすがに猫の走りでも2時間はキツい。
なのに四楓院の元気は変わらない。
かといって止まる訳に行かない。

大体それくらい限界に近づいてきたとき、どこか遠くで葵の姿を見つける。
檻神と一緒に隊室に戻るのを見てそっちに走る方向を変えた。


ギリギリで隊室に飛び込むと葵が驚いたようにこっちを見るからすぐその体に飛び付いた。
ぜーぜー言ってる背中を撫でてもらう頃には四楓院も追い付いている。





「あー!猫ちゃんズルいー!」

「またやったんですか空……」



多少呆れた声で、抱きついたままの俺をあやす葵。
もっと叱っても良いのに。



「猫ちゃんの前髪が気になるってここにいる人の半分は思ってますよー。葵様も見たくないですか?」

「私は見たことがありますから」



その瞬間隊室内のほとんどの奴らの目が点になった。



「みっ見たんですか!?」

「ええ。見ましたよね殺那」

「はい、残念ながら俺は離れていたので見えませんでしたが」



ポカーンとしていた四楓院がハッと気がついて目を輝かせた。



「どんなでした!?猫ちゃんどんな目でした!?」

「目がありませんでした」

「うええ!?」

「嘘です」



…葵は正直、中々良い性格をしてると思う。



「七猫が嫌がるので言いませんよ」

「聞きたいですー!すっごくすっごくすっごく聞きたいですー!!」





ああ、いつもこんな風に叫びながら葵の腕を振り回したりするから。



ゴンッッッ!



背後の檻神に気づけないんだろうな。




「いだあっ!」

「葵様を煩わせるな空」

「あ、頭の細胞減っちゃう!」

「安心しろ、それ以上キテレツにはならない」

「さらっと失礼だね殺ちゃん!!」



こうしてようやく日々の恒例行事が終わる。
が、四楓院による葵への俺の目の質問攻撃はしばらく続いた。





Fin.

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