【「あの」話】





「ここでもないですか…」

「隊長、何なさってるんですか?」



何やら引き出しを開けたり閉めたりしている自隊の隊長を不思議がって零番隊の隊員が声をかけた。



「探しものをしていまして」

「書類とかですか?」

「いえ、もう少し大きな」



どこへいきましたかね、とあちらこちらを探す葵の横で隊員も自分の目的を思い出した。



「私も他の隊から届いた荷物取りに来たんです。えーと確かここに…」



と比較的大きな棚の引き出しを開けた時。





「っきゃああああああ!!」



ものすごい早さで腰を抜かした。
何事かと葵が駆け寄ると、飛びはねそうな心臓を抑えながら引き出しを指差す。

その中を覗いた葵が、ああ見つけましたと呟いて。





「そんな所で寝てはいけませんよ、七猫」

「んー…」



引き出しの中にはコンパクトに丸まった七猫が収納されていた。
見慣れていてもこんな小さな引き出しに人が入っていては腰も抜かすだろう。



「隊長が探していたのって…」

「はい、七猫です。姿が見当たらなかったので」

「…探し『者』だったんですか」



どうやらまた空がちょっかいをかけて、いつもの寝床の毛布を持って行ってしまったらしい。
まだどこまでも眠たそうな声をしているので、仕方なく二人でそっと引き出しを戻した。

その後。





「た、隊長。他隊からの荷物また引き出しに届いていたりしますか…?」

「荷物でしたらこちらの棚に届いていますが、どうしました?」

「あ、あれからどこの引き出しにも四席が入ってるんじゃないかと怖くなって、開けられなくなってしまいまして…」

「…………」







――――――…



「葵ー、この『四席専用収納場所』って書かれた引き出し何?七猫なんてそんなに荷物持ってないじゃない」

「…言葉通りの意味になります」

「?」





Fin.
開けない方が良いですよ

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