「なぜ支給されたのが十一本なのかと思ったら、乱菊さんの分だったんですね。」
「どうしてもこっちで支給されたかったのよね、十番隊は女子が少ないからこういうイベントが楽しくないのよ。」
「俺はそちらの方が羨ましいですが…」
こういうちょっとしたお祭り騒ぎの感覚が分からない殺那は、一人早急な静粛を求めていた。
今にもはしゃぐ女子隊員+イベント好きな一部の男隊員を叱り飛ばしそうな副隊長を葵がどうにかなだめる。
「あんたが今外出たら大変なことになるわよ?
何せあちこちで引き当てた義魂丸の情報交換が行われてるもの。」
「考えたくもありません…」
「っきゃあああー!!」
突如つんざいた空の悲鳴、けれどもそれが全くもって緊急性の無いものと皆理解していた。
「らら乱菊様!
私パパパパパパプルルルル…」
「ちょっとちょっと落ち着きなさい。
ほら噛みまくってる舌逃がして。」
「はっはい、えっと手のひらに人って書いて…」
それは何か違う気もするがと思ったが、つまり空の言いたいこととしては。
「私!三番人気のパプルス当たりました!
わんこですわんこ!!」
「ええー三席パプルスですか!?」
「いいなー!」
きらっきらの目をした空に、周囲の隊員もきらっきらの目で答える。
乱菊も三番人気までのキャラクターの出現難易度を聞きかじっていたので素直に驚く。
「あらすごい、確か何十本に一本でしょそれ。」
「そんなに少ないんですか。」
「そうなのよ。
七緒が『やるからにはプレミアを』ってね、確か一番人気と二番人気はそれ以上に出ないはずよ。」
「凝ってるんですね。」
そうこうしてる間にさっさと殺那が選び、促されて乱菊も選んだ。
「あ、やりぃって感じ。
私カエルよ。」
「ああ、確か狙っていたという。」
「そうなのよ。
人気は低いんだけど、このちょいぶさな顔が私は好きなのよねー。
はい葵の。」
「ありがとうございます。」
ひょいと箱に一つ残ったそれを手渡してくれた。
受け取りながら周りを見れば、もう隊員同士で交換を行っている者もいる。
「交換は手っ取り早くて良いですね。」
「何が当たるかが運じゃあ、外れた時の解決策はそれしかないわよね。
…葵、あんたの猫、口で包装破ろうとしてめちゃくちゃになってるわよ。」
「おや。」
こらこら、と丸まる毛布の周りに散々義魂丸の包装紙を散らかした七猫からそれを取り上げた。
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