白い箱の中から見つけた藁人形と、役割であるロウソクを持って先頭を歩いていく葵。
だいぶ歩かない内に次の赤い箱が見えた。
「赤色もまた不気味ですね…」
「次誰が行くん?」
「私パス!」
と言うことで、ギンの担当に。
さっきの白い箱は抱えられるほど小さかったが、これは子ども一人くらいなら入れそうな大きさだ。
(…絶対何かいるやろコレ…)
自分にバトンを回した乱菊を少し恨みつつ、葵から受け取ったロウソクを持ちながら扉に手をかけた。
その瞬間、中から白い物体が躍り出た。
ガチャッ!
「お化けだぞー!……っぎゃああああああ狐ええぇー!」
躍り出た、はずが。
ギンと対峙したとたんに泣き声をあげて逃げていった。
それはもう脱兎のごとく。
「…………」
「かける言葉が見当たりませんね」
「ギン!そんな所にうずくまっちゃ駄目よ!」
狐と言われた本人、ずーんと頭上に縦線の雨が降りそうな雰囲気を発している。
「…お化けに狐言われた…」
「暗かったですし、ロウソクで顔を照らしていたら誰だって怖くなりますよ」
「そうそう、だからロウソクを下から照らさないで。ごめんマジで怖いわ」
うなだれるギンの代わりに葵が赤い箱の中から日本人形を取ってきた。
どうやらこの箱の脅かしは、先ほど逃げていったお化けに仮装した隊員だけのようだ。
「やられたわ…慰安協会がここまで読んどったとは…」
「絶対に違うと思うわよギン。って何で葵の時は藁人形だったのにギンの時は日本人形になってるのよ…」
ギンが首根っこを持っているまがまがしい日本人形と必死に視線を合わせないようにしていた時。
あ、と不意に葵が立ち止まった。
「…なしたん?」
「ななな何かあった?」
「いえ…これなんですが」
そう言って持っていたはじめに配られた説明書きを見せる。
「最初に説明を読んだときには暗くてよく見えなかったんですけど…」
暗闇に慣れた目で葵がロウソクで指し示した箇所を覗き込むと。
――三つの箱の中身は白→赤→黒の順番で怖くなっていきます――
「…はいぃ!?」
「あー、せやから生首の次に生身の仮装やったんやね」
「藁人形から日本人形でしたしね。すみません、気づかなくて」
「ちょっと待ちなさいよ!最後の箱って確か私の―…」
思わず後ずさった乱菊の背中に何かが当たった。
「へ?」
間抜けな声と一緒に振り返ったそこにあったのは。
巨大な黒い箱だった。
「!!!」
「ああ、最後は乱菊の番やったなあ」
「え、ちょ…」
「頑張ってきて下さい乱菊さん」
唯一の助け船に後押しされてしまっては行かざるをえない。
何気に最後の箱を選んだのは自分に変わりないのだし。
青ざめながら黒い箱の前に立つ。
(何でこんなにデカいのよ…!)
白い箱や赤い箱よりも大きい、自分の背はゆうに越す黒い箱。
何やら中から音が聞こえてくるのは気のせいだと必死に自分に言い聞かせる乱菊。
葵からロウソクを受け取って、ゆっくりゆっくり扉の取っ手に手をかけた。
その時。
ガシッ
「!!!
いやああああああああ!」
突然扉から出てきた白い手が乱菊の腕を掴んだ。
「ちょっといやあああ!何コレ!何コレ!!」
「乱菊ファイトー」
「見てないで助けなさいよおお!」
ぎゃーぎゃー叫びながらも扉の隙間から出てきた腕に渾身の蹴りを何度も食らわせている辺り、強い。
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