「いらっしゃいませ、三名様ですか?」
「あ、はーい三名様でーす」
「店みたいなノリやね」
からかさお化けに扮した慰安協会の死神から火のついた台付きのロウソクを一本渡された。
「明かりとして使えるのはコレ一つですので、消さないように気をつけて下さい」
「よっし、私持つわ」
「ちょっ、あかんあかん。お前はあかん」
「何でよー」
「お前に持たせたら何となく結末が想像出来るわ」
そんなわけで葵がロウソクを持つことになった。
「いってらっしゃいませー♪」
という明るい声に送り出されて。
肝だめし、スタート。
「真っ暗ねえ…」
ほぼ暗闇となった道を、葵が持つロウソクの明かり一つを頼りに進んでいく。
両端から生えている並木道の木が風で揺れて何とも気味が悪い。
「な、何か静かね…」
「いや、ここで気ぃ抜いたら…」
ギャー!ギャー!
「いいい今の音何!?」
「鳥か何かでしょう」
「何かって何よお!」
しっかりと葵の袖を掴んでいささかゆっくり歩いてくる乱菊。
「一番行きたがってたお前が怖がってどないすんねん」
「だだだってもう少し子供っぽいもんだと思ってたんだもの…!お化けの格好した隊員が出てきてわー♪きゃー☆みたいな」
「それは明るいですねぇ…」
通常並木道は一本道のはずなのだけど、あちこちに作られた墓や茂みのせいでまるで先が見えない。
そんな中をスタスタ歩いていく葵、まだ普通に歩いているギン、葵の袖を握りながらついてくる乱菊。
「何すればゴールなん?」
「ええと…途中にある白・赤・黒の箱から人形を一つずつ取って、計三つを並木道の終わりで待っている隊員に見せたらゴールだそうです。一つでも足りないと戻ってもらうと書いてあります」
「…絶対戻りたくないわね」
はじめにもらった説明書きをロウソクの明かりで読んだご一行の行く先に。
「…ありましたね」
一つ目の小さな白い箱があった。
暗闇の中で唯一の白にかなり恐怖がつのる。
「うわ、やだ…めっちゃ開けたくないんだけど」
「絶対中に置いてあるの人形だけやないやろね…」
「どうします?」
考えた末、観音開きになっている箱を開けられるのは一人だけなので、一人一箱を担当することになった。
「じゃあ葵から行ってきて!」
「良いんですか?」
「良いの!」
この白い箱は葵の担当。
大してためらうことなくスタスタ箱の前に立って扉に手をかけてから、後方で待機している乱菊とギンに合図を出した後。
ギイイィィ…
ゆっくりと扉を開けた。
「どうやー?葵」
「えっと…生首はありましたが後は何もないです」
「ありまくりじゃないのおぉ!」
無事を確認して残りの二人も近寄ると、確かに白い箱の中には生首が。
しかも白目をむき髪を振り乱し口から血を流しているかなり恐ろしい形相。
「生首の頭の上に人形がありました」
「よくそんな恐ろしい物の上から取れたわね…」
「どうせ作りもんやろ」
「そうじゃなかったら困るわよ!」
確かに。
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