「葵あかん!こないな手紙に惑わされたらあかんよ!だいたい告白するなら直接言えっちゅうねん!」


「い、いえ違います…そういう意味ではなくてですね…」



揺さぶられて途切れながらも何とか弁明する。



「捨てたくないとかそう言うのではなくて、この中の半分は元零番隊隊員からの手紙が入っているんです」

「零番隊?」

「はい。解散のとき流魂街へ離れていった隊員達から手紙が来るので、恋文とは離して置いていたんですけど……。この雪崩でどれがどれだか分からなくなってしまいまして」






それでか、とようやく納得したギン。
これでも葵は元零番隊隊長。
慕う部下から手紙が届くのはさして不思議ではない。

ただ不思議なのは。





「…零番隊の元隊員って、解散のときバラバラになったんやろ?」

「はい。どの隊員も誰がどこにいるか知りませんから、当てずっぽうで瀞霊廷に送ってくるんです。それをこっそり総隊長が渡してくれるので」



もちろん葵の方から返信は出来ない。
居場所を特定してしまうから。

その先に自分がいるかは分からないのに、それでも定期的に手紙を寄越す隊員達。
今頃殺那達はどこにいるのだろうと、ふと頭をよぎったりもした。






「てことは、こん中のどれが隊員からの手紙か分からんの?」

「…零番隊の便箋は、普通の便箋にカモフラージュしてありましたから」

「あちゃー…」



改めて見る手紙の海が今度は別の意味でいろいろ大変だ。
それは確かに簡単に捨てられる物ではない。



「一つ一つ確認するか」

「三百はありますよ?」

「うん、やめよ」




半分が零番隊からの手紙だとしても、残りの百五十は恋文ということになる。
果たしてそれは少女一人が数年間でもらう量だろうか。





(そらまあ、葵は綺麗やけど…)





よく考えれば当たり前な話。
まるで人とは思えない葵を見て目を奪われない者は相当少ないはずだ。



「何や見分ける方法でもあるとええんやけどねぇ」



軽く呟いたギンの一言に、葵が少しだけ顔を曇らせて。



「……一つだけ、あります」






















パチパチパチ…


すぐ目の前でたき火の火がゆらめいている。
風が強いのにその火が消えないのは、恐らく燃えているものが良いからなのだろう。



「…燃やしちゃいましたね、手紙」

「せやかてこれしか方法ないやん。零番隊用の手紙は燃やすと地獄蝶が出るんやろ?」



そう。
唯一いっぺんに手紙を分ける方法。
情報漏れを防ぐために零番隊用の便箋は地獄蝶が織り込まれており、燃やさなければ出せない仕組みになっている。

そのため、地獄蝶が出てきた手紙が零番隊隊員からの物。
燃えた手紙はただの手紙。


恋文と言うものを燃やすのも申し訳ないと一瞬思ったけれど、実際全ての話は丁寧に断っているしいつかは捨てるものだと思うと案外簡単に割りきれた。



「何だかこう言うシーンに将来遭遇しそうですが…大丈夫ですか」

「バレへんバレへん。燃えたらみんな真っ黒や」

「市丸隊長の発言も真っ黒ですね」

「元からやけどね」











その内時間が立つと、火の中からふわりと一匹の地獄蝶が舞い上がった。
それを筆頭に次々と手紙が蝶へと変わる。



 

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