一方ギンはギンで自分でも時間を計りながら会話を続けていた。
3分ほどしたらさっさと切り上げる気でいたので、大して話を深めずに上辺だけで続行する。
すると今までこちらだけを見ていた店員が、チラチラと後ろを伺うようになった。
「今日はお連れ様とご一緒で……?」
「ん?」
振り返った先では、恐らく物陰に潜んでいた(つもりであろう)葵と乱菊が別の店員にビジネストークを受けていた。
あそこはカメラの場所だろうか。
「だから私達はあそこの狐野郎を待ってるだけで…!」
「お客様方は大変お綺麗ですから良いカメラを使うと一層映えますよ〜」
「は、生えるって何が?」
「乱菊、動詞的な意味じゃないですよ。
形容詞的な意味です。」
あー……という顔をしたので、こちらの店員もすぐに察したようだ。
「テレビと一緒にカメラをご購入される方も多いんですよ。
あちらのお連れ様におすすめしてるのはデジカメですけど、このようなビデオカメラタイプですと、撮影しているものをテレビに流せるんです。
ほら!」
そう言っていつの間にか構えていたビデオカメラを向こうの二人へ向けた。
瞬間。
「……あれ、映らない……」
「「「!」」」
カメラを通して展示中のテレビ全てに映し出されたのは、葵と乱菊へ話しかけていた店員だけ。
その隣に二人分の空白を残している。
「もうええわ、おおきに!」
「わっ私も買う予定ないんで!」
「ありがとうございました。」
「え、はい…」
ダッシュで最上階へ向かうエスカレーターに飛び乗り、必要ないと分かっていながらも更にかけ登った。
背後からカメラの故障やテレビとの接触不良を疑う店員たちの声が聞こえたが、もう何も聞こえないふりをする。
「び、ビビッたわ…」
「思いっきり油断してたな…」
「…ギンの記録は2分45秒ですね。」
「アクシデントあったしなぁ。
まあええわ、ビリやないし。」
「どうせ私はぶっちぎりのビリよっ。」
「この階は…なんでしょう?」
最上階である4階はさして目立つ電化製品は置いていなかった。
その代わり食事をとる場所や、ゲームコーナーがあちこちにちらほら見える。
「おー何やおもろそうなとこ来たなぁ。」
「休憩所みたいなとこなのね。
どこか座らないと疲れてきたわ。」
「じゃあ『ブラブラする』という奴ですね。」
「あ!クレープあるじゃない!
お姉さん一つちょうだい!」
「お前のどこが疲れとるんや。」
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