そして当日。
「はあっ…私一度でいいから葵にワンピースを着せたかったのよ。
夢が叶ったわ。」
「ありがとうございます。」
降り立った現世の、一つのショーウインドウの前で最後のチェックを済ませる。
イヅルが選んだ(もとい当てた)場所は栄えすぎず廃れすぎずの、程よい街中だったらしい。
人通りもそれなりに多い。
「乱菊のはこう…露出が多いですね。」
「女は出せるときに出しておくものよ。
ギリギリのラインがみそね。」
「肩も脚も背中も丸出しのどこがギリギリやねん。」
「…あらーギン、私のハイセンスチョイスの服はやめたの?」
「『私は葵の服選びに忙しいからあんたはこんなのでいいでしょ』言うて学ランとスーツ持ってきた奴の台詞か。
急遽そこの店で調達したわ。」
どおりで現世に来てからギンの姿が一瞬消えたわけだ。
「でもとても似合ってますね。」
「うん、僕大抵のもんは似合うんや。」
「うわっやな男。」
わあわあと騒いでいても時間だけが経ってしまうので、とりあえず動くことにした。
街中を選択したので観光めいた物が無い分、大体の店は揃っている。
「私行ってみたい所があるのよね。
確かこの通りの先にあるわ。」
「ではそちらの方に――」
と顔を向けた瞬間、パシャッと閃光がいくつか瞬いた。
とっさに光がした方へ顔を向けると、カメラを抱えたまま走り去る人影が。
「今のは…?」
「ああ、カメラ小僧って奴よ。
絵になる人間がいると撮ったりするんだけど、許可なしで撮るなんてマナーがなってないわ。」
「えらい必死やったなあ…で、僕ら写っとるん?」
「写ってないでしょうね…」
本来現世に来るには義骸に入らなければならないけれど、今日は半日だけの短時間ということでそれはやめている。
乱菊曰わく「義骸もタダじゃないしね」とのこと。
そのため総隊長に霊圧は抑える分霊力を上げてもらい、ほとんど実体化してもらった。
「触れるし視認されるけど、カメラとかを通すと私達は写んないのよねー。
おかげでプリクラ撮れないじゃない。」
「難点そこか?
まあ葵が隠し撮られたらお前はタダじゃ済まさへんしな。」
「そうよ!
速攻でカメラひん剥いてつかみかかって謝罪させるわ。」
「しそうですね。」
「そして写真を売ってもらう!」
「その通りや。」
「ちょっとちょっと。」
会話が駄目な流れになってきた時、乱菊が指をさして目的の店を見つけたのでどうにかそのまま終わった。
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