「はー、そないなことがなあ。」
「はい。」
執務の空き時間、ギンの隊長室へお邪魔した葵の義魂丸にまつわるエピソードを聞き終えた。
何や盛り上がってるのは知っとったけど、と自分の義魂丸を不思議そうに弄ぶ。
「僕も副隊長さん派やなあ。
義魂丸が何のキャラでも構わんし。」
「市丸隊長はぴったりの物が当たりましたし。」
「うん、それは僕も思っとる。」
そう言い再び懐へしまった時、派手に障子を開いて乱菊が部屋へ飛び込んできた。
「葵!
さっき空から聞いたんだけど、ドクロのアルフレッドに変えたって本当!?」
「あ、はい。」
殺那と変えてもらいました、と見せれば、安心したような残念そうな複雑な表情を浮かべて声を漏らす。
「どうかしましたか、」
「いやあのね、浦原がかなりいい値段でチャッピーの義魂丸を買い取るって言ってるみたいなのよ。
葵がいらないなら売っちゃうのも手よねって思ったし、売らなくても誰かに狙われたりしないかしらって。」
「ああ、それは心配やな。
けどもう大丈夫やろ。」
「何でよ?」
「葵のと交換したの副隊長さんやねん。」
檻神?と疑問符を浮かべた乱菊があのチャッピーを持っている殺那を想像し、見て取れるほどに渋い顔をした。
「似っ合わないわね…」
「それ以上は言ってあげないでください。」
「でも葵がアルフレッドなら私も誰かと交換してお揃いにしようかしら。
チャッピーはさすがに無理だけど、アルフレッドはあまり人気が無いから出来ると思うのよね。」
「なして女の子らってお揃い好きなん?
同じもん持っとるってだけやん。」
四番隊に次いで女子隊員の多い三番隊の隊長は案の定今日一日騒がしい日々を送ったらしく、乱菊の持つ義魂丸は視界にも入れない。
「男には分かりづらいわよ。」
「ほんまにそうやわ。
葵は?
あんまりお揃いなんて気にせえへんやろ。」
「そうですね…」
そう呟きかけて、けれど、いいえと答え直した。
着物の上から自分の義魂丸を触りながら。
「気持ちは少し、分かりますよ。」
「そうなん?」
「はい。」
そう言って葵が珍しく小さく微笑んだので、二人はとりあえずしっかりと目を奪われた後。
各地でアルフレッド狩りを始めましたとさ。
(あ、葵ー。
僕もドクロのになったでー)
(私もよ!)
(…七猫は杞憂だったんですね…)
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