「生き物の肉は、俺いいや」
「ウッス」
「もー、ヤマギ折角作ったんだからそんなこと言わずにちゃんと食べてよ」
「あれ、イオナ今食べてるんだ。仕事終わったの?」
「ううん、まだ洗い物とか片付け残ってるけど、食器皆のと一緒にまとめて片付けれた方が楽だから手の空いた今のうちに……ってもう!話逸らして!」
「バレた?」

「いいッスか」
「!」


イオナが整備班の三人、そしてアトラと他愛もない話をしつつ食事をしていると見たことのある新人が声をかけてきた。つい先日仕事の空いた時間でシノのところに顔を出した時の会話が印象的だったのでよく覚えている。

真剣な面持ちで黙りこんだままのハッシュに続きの言葉を待つその場にいた5人を代表し雪之丞が 「どうした」とたずねると彼はモビルスーツに乗せて欲しいと志願してきた。話を聞いていた五人が目を丸くして、あまりよくない反応をみせると彼はマニュアルも読んで、必要とあらば阿頼耶識の手術を受けるとまで言い出した。

ただの感ではあるものの、昇進目的や自信過剰からの発言とは違う真剣さのある面持ちにイオナは否定もせず、何か理由があるなら味方になってあげたいと思いながら彼の話を黙って聞いていたが、彼の年ではナノマシーンが定着しないこととそれ故手術を受けることができないことを伝えると、「手術が失敗してもいいから、とにかくためしにやってくれ」と言い出し、それに怒ったアトラと口論に発展してしまった


(…なんで、あんなに焦ってるのかな

なんか…………)

「あんたに何がわかんだよ……!いいからどけ!」
「あっ、アトラ!」


モビルスーツに乗れないことと、アトラとの口論とが重なってフラストレーションが溜まったのか思わずアトラに手をあげそうになる。流石に止めないとマズイと思ったイオナが止めようと立ち上がるも、イオナが止めるまえに三日月がハッシュの手首をつかんでそれをやめさせた


「…ミカ」
「あ、三日月……これは………」
「何これ」
「何でも……ッ!」


ハッシュが三日月の手を振りほどこうとするが、静かな声と見た目に反して意外と力強く握られた手は振りほどけず少しずつだがギリギリと込められる力は増していき耐えかねたハッシュは膝から崩れる

「ストップストップ、それ以上はだめだよ」

見かねたイオナが止めようと三日月の手を掴むと、イオナに止められた三日月も力を入れるのをやめてイオナに話を聞こうと、彼女を見つめ続けた

「…イオナ、でも」
「大丈夫だよ、本当にやばいなら私も黙って座ってない」
「おい、いい加減にしねえと折れちまうぞ」
「本当に、ただおしゃべりしてただけだから」
「そう?いじめられてなかった?」
「私いじめられっ子じゃないよ!」
「ミカは本当に…先輩になったんだしいい加減手加減ってものを覚えようね、あと早とちりも直さなきゃ」
「難しいかな、今みたいにイオナがとめてよ」
「あのねぇ……」

「……なんで……」
「!…大丈ー」
「なんであんたはよくってアイツは……!」
「…アイツ?」


手首を握りしめ、悔しそうに呟くハッシュの言葉に三日月が首をかしげると、ハッシュは唇を噛み締め「もういいです。すいませんした」と、一言残してそのまま外に出ていってしまった


(手首、痛そうだったなあ)


取り残された雪之丞たちが台風が通り過ぎた後のような様子でいる中イオナだけは別の何かがひっかってスッキリとしない気持ちで出ていくときの彼の背中を思い出していた。三日月に捕まれた方の手首を擦りながら出ていく彼の姿を思い出していたイオナはすぐに元々座っていた席に戻ると三分の一ほど残っていたスープを急いでかきこんだ


「イオナ?」
「喉積めるよ?」
「っ、ごちそうさま!アトラごめん後片付け任せる」
「えっ!?ああそれはいいけど、ってイオナ!!?どこ行くの!?」


アトラの呼び掛けにも振り返る間もなく忙しなく駆けていったイオナに、残された五人がまたキョトンとしていると、「追いかけたんじゃない」と三日月が

「お、追いかけるって、なんで……」
「女の子って、ちょっと危ない感じの男がいいって言うし、気になるんじゃない?」
「そうかぁ、17ってことはアイツ調度イオナと同い年だしなあ。ネフリーが喜ぶぞ、こりゃあ」
「えっ!?いやそんな、だってあの子ネフリーさんと全然違うし……ええ……」


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