「は〜〜〜〜」
「なっげえため息ついてどうした」
「俺は今猛烈に幸せを噛み締めている」
「は???」

ここは鉄華団の施設内にある格納庫。長いため息をついたのは実践訓練終わりで休憩の合間にシノとユージンに茶々をいれに来たネフリーだ

「何言ってんだオメー」
「疲れか?ストレスか?」
「頭は正常ですけど」
「いや正常じゃねえと思うぞ?」
「右に同じく」
「うるせーっ!!!」

同僚二人に頭を心配されたネフリーは不服そうに声をあげた、そうすれば離れたところから「うるさいよ」と嗜めるヤマギの声が飛んでくる

「わっ、ごめんごめん」
「あんま怒らせんなよ〜」
「……で、本当にどうしたんだよ」
「うちの……」
「うちの?」
「うちの妹にもついに春が来た……!」


そう。ネフリーが喜んでいるのは妹のイオナの事だ。中々兄離れができず「恋人?お兄ちゃんみたいな人がいたら考えるかなあ」なんて兄としては嬉しいようで不安な事を言っていた妹にも遂に想い人ができたらしく兄としてはその妹の成長がとても喜ばしいのだ


「ふふ……いやぁイオナも大きくなったんだなあ……」
「言い方が気色悪い」
「今日当たりキツくない?」
「別にフツーだろ」
「は〜〜それにしても、イオナに好きな人ねえ…」

感慨深そうにシノがそういうと「お前まで…」とユージンは表情を歪め、ネフリーは満足気な顔をする。

「だってよぉ、覚えてるか?初めてアイツがここ来た時のこと

スゲーちっちゃくてさあネフ見るなり走ってきて飛び付いてさぁ」
「アイツ昔からネフにベッタリだったもんな」
「そーそーそれでネフに挨拶しなって言われてネフの背中越しに顔だけ出して俺らに挨拶してさあ〜」
「あの頃"は"可愛げあったのになあ……」
「お前デレッデレだったもんな」
「う、うるせえなお前だってあんま変わんなかっただろ!!」
「二人ともどっちもどっちだったと思うけどな」
「んなことねえ!」
「あるよ」
「いやーーー」
「なあそこどうでもよくねえか」
「……」

話題が逸れそうになったところを妙に冷静なシノに指摘されムキになっていたユージンがハッとすると終わりの見えない言い合いはそこで幕をひいた。何でもないことでずっと駄弁っていられる三人の事だからきっと止められていなければそのまま話題は大きく逸れて最終的に「何の話してたっけ」なんてオチは容易に考えられた。

「で、だよシノの言う通りあんなにちっちゃかったイオナが恋する年頃になったんだよ?兄としては嬉しいことこの上ないね!」
「おめぇアイツに好きな男できたらキレるタイプだと思ってたわ」
「いやネフはシスコンだけどそういうとこは冷めてるっつーか『幸せになってくれればそれでいい』タイプだろ」
「あー…」
「まあシノの言ってる感じかな、そりゃ相手がとんでもないクズだとかイオナが騙されてるってなったら怒るけど…

ま、ここにいる子にそんなやついないだろ」

そう言いながらネフリーはハッシュの事を思い出していた。確かに少し危なっかしく見えるかもしれないし、なんとなく急いでるように見えるとも感じた、空回りかもしれないでもそれはまるで何年か前の自分の姿を見ているようでそのせいかどうにも彼が悪い人間であるように見えなかった。

不器用なあの子たちはあの子たちなりに青春してる、だから俺は俺にできることを……なんて昔なら絶対思いもしなかったことを考えている自分が可笑しくてこれも目の前でまた話題を変えて馬鹿みたいな話をしてるコイツらのお陰かな なんてらしくもないことを考えてネフリーはこの他愛もない、深い意味もない馬鹿みたいなやりとりの心地よさを噛み締めるように目を閉じた





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