似て非なるそれぞれ 1/3ハリー君がクィディッチのシーカーに選ばれたという話しはその日のうちに学校中に広まった。
グリフィンドールのクィディッチのキャプテン、オリバー君が双子に話したのがまずかった。
だが、女子の間ではそんなことよりも「ブラック先生超イケメン」という話しで持ちきりだった。
「ブラック先生っていい人だわ…スリザリンも捨てたものじゃないわね!」
ハーマイオニーちゃんまでもがうっとりしている。
おい、助けたの私、私!
私はまた一切れパイを口に運んだ。
「でもレギュラスってそんなに格好いいとはおもえな「そんなことないわ!」はいそのとおりです、ええレギュラスまじイケメン」
「スリザリンでありながらあの優しい態度…。あれよ、当にあれを紳士というんだわ!マルフォイも見習ってくれないかしら?」
はぁ、と苛立ったため息をつきながらばたんっ!と本を閉じた。
「でもね、ドラコ君もドラコ君なりに苦労してるんだよ?」
「そんなの、だからといっていじめをしてもいいという理由にならないわ!」
あー、それ、その言葉そっくりそのままハリー君のお父さんに言ってあげて。
キッと睨まれながら、私は苦笑いを浮かべた。
3つ目のステーキ・キドニーパイは胃の中へ収まった後だった。
「おい、ちょっとはハリーの話しもしてやれよ」
向こうからロン君とハリー君がやってきて、向かいの席に座った。
「やめて、いいんだロン。」
「でもハリー、スリザリン野郎に負けてんだぜ?」
「いいんだ。騒がれるの、好きじゃないし。」
自嘲気味に笑うハリー君を見つめながら、「お父さんとは正反対だねぇ」と呟いた。
「え?」
何気なく呟いたそれに、はっとハリー君は顔をあげて食いついてきた。
「父さんは好きだったの?その…騒がれるのが。」
ジェームズとかリリーの話しをすると、ハリー君は必ず食いついてくる。
やっぱり、家では何も話されていないんだろうか。
「んー、まあね。いつも何かしら騒ぎはおこしてたよ。」
私のその言葉に、ハリー君は信じられない、という顔をしていた。
「一年生でシーカーだぜ?これって、すっげえ…。」
ロン君は大変興奮していらっしゃる。
それに比例して、ハーマイオニーちゃんのテンションは低くなっていった。
「ねぇ、リシュヴァさん!一年生って、初めてじゃないかな…」
「百年ぶりだって。ウッドが言ってた」
「そこはお父さん譲りなんだね」
ハリー君に微笑みながらいうと、ハリー君のほっぺたが赤くなっていった。
照れ隠しのためなのか、一気に2つもパイを口に押し込んだ。
「来週から練習なんだ。でも、誰にも言うなって、ウッドが。」
おいそれ言っちゃってるよ!
私はパイを吹き出すのをぐっとこらえた。と同時に、双子がやってきて嵐のように2人で思い思いに言葉を浴びせて帰って行った。
その言葉の中に、学校を出る抜け道…とか聞こえたけど、聞かなかったことにしよう。めんどくさいし!
「ポッター、いいねぇ英雄さんは。え?さぞ食事がうまいだろう」
いつの間にかドラコ君が、腰巾着をつれてハリー君の後ろに立っていた。
「地上ではやけに元気だね。小さなお友達もいるしね」
ハリー君が冷ややかに言った。
そしてドラコ君は私をちらっと見た。
「あー、リシュヴァさん。スネイプ先生がお呼びでしたよ?」
「え!嘘、なんで?また私何か注文し忘れてたっけ!?」
教えてくれたドラコ君にありがとーと叫びながら、掴んできたパイを頬張り大広間を飛び出した。
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