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書きたいとこだけなので、ぶつ切りが多いです。
名前変換付きのやつは、トップのお話が並んでるところの下にある、▼を押したら過去のものがでてきます。


231209 /// マルコ
あおい炎がゆらめいてわたしを包み込む。人肌くらいの心地よいぬるさだった。羊水のなかでたゆたう子どもはこんな気持ちなのかもしれない、と思う。

「マルコ」

炎がさぁとひいて、現れたたくましい腕がわたしを抱いた。日に焼けつづけた浅黒い肌。固くボタンが閉ざされたシャツ。なんだよい、と小さく返事が聞こえた。

「今日もおつかれさま」
「……うん」


231209 /// モモンガ
モモンガ中将が愛妻家だというのは、海軍のなかでは有名な話でした。仕事一徹のモモンガ中将が意外だから、というのです。今の、中将になってからのモモンガしかしらないひとは、嘘だあ、と口を揃えて言います。
「線のほそい、色白なひとだよ」
奥さんはどんな人かと聞かれると、みんなまあ、だいたいこんな風に言うのでした。中将になるまえのモモンガをしるひとは、どうやらもれなく、例の奥さんと顔見知りのようです。聞くところによると、モモンガの奥さんは元海軍の事務員さんだそうです。結婚を機に、モモンガの希望もあって、家庭に入ったのでした。



みんなが一様にあたたかいまなざしでそのやりとりを見守っています。モモンガは顔が赤くなったまま、怒るか怒るまいかを悩んでいました。妻の手前、というやつです。さえこはそんなことはお見通しでしたので、ふふ、と微笑んでいます。


210522 /// 夏油?
規則正しい寝息が聞こえる。胸が上下する。たしかに生きているーーようにみえる。
醜く額にある、へたくそな縫い傷を指でなぞった。ぐっと押せば簡単に開きそうだった。
傑は死んだ。
今の傑は、彼であって彼でない。
「私の額に、そんなに面白いものがあるのかい」
うっすらと目があいた。からかうというよりも、純粋にねむたそうなまなざし。
「ばけもののくせに、眠たいのね」
「……失礼な子どもだ」
頭に手がまわり、ぐっと傑の胸に押しつけられる。
「あいにくと睡眠は欠かせないんだ。もうすこしで起きるから、それまで君も眠るといい」
本当に眠たいようだった。すぐさま穏やかな、呼吸の音がしはじめる。


210125 /// 東堂
大きな女がすきだと豪語してやまなかった東堂葵の恋人は、ほっそりとした小柄な少女だった。わたしには不思議と違和感がなく、そうか、と妙に納得したのを覚えている。線が細くて色の白い、力強さとはほど遠い印象。それなのにしっくりときたと感じた自分が、わたしは不思議だった。


210107 /// レッド(pkmn)
しんしんと雪が降る。音を吸い込み、つめたさをはらんだ白さが積み上がってゆく。
重みでぐんにゃりと曲がった木の枝を見つけて、落ちそう、と思ったときにはずるりと雪が滑り落ちた。

「さむいねえ」

ジョウトの冬は厳しい。わたしの故郷、アローラよりずっと。越してきてからはじめての冬に、わたしは緊張するような、胃の奥のこそばゆさを感じていた。

「シロガネはもっとすごい」

となりに座っていたレッドがリュックをあさり、カメラを取りだす。

「写真好きだっけ?」

きみに見せようと思って、と言い、レッドが電源ボタンを押す。わざわざカメラを買って、シロガネ山に入れないわたしのために写真を撮っていたらしい。

「みて」

レッドがカメラのモニターをさしだすのを、わたしは身体を寄せてのぞき込んだ。


201126 /// 承太郎(jogio)
早く目がさめればいいのに。承太郎はずっとそう考えていた。
彼女を縛るあのおとこ。
死んで灰になってもなお消えない強烈な存在感。承太郎は胸のうちで舌打ちをした。
それでも、彼女が振り向いてくれるまであとすこし。弱った彼女に寄り添いつづけて、ようやくだった。

ーーざまあないな、DIO。


201124 /// 硝子
ーーどこまでも自分を追い込んで、そうして終いには、君は自死するのだろうね。

屋上の手すりに肘をついて硝子は言った。ゆらゆらと立ちのぼる煙に、こほ、と軽く咳き込む。すこし前、煙草をやめないのかと尋ねると硝子が首をかしげたのを思い出した。学生時代に吸い始めるとやめにくいそうだ、と言い、硝子は煙をまた吐き出す。
硝子は自分を追いつめることはないだろうけれど、煙草を吸うということは、死へ向かっていることなのではないのだろうか。ゆるやかな自殺。そう例えられることを、彼女が知らないはずがないのに。


200914 /// 十代(ygogx)
ーー十代って、素敵よね。
あり得ない、と声があがった。そんなに変なことを言っただろうか、と思う。
「レッド寮よ?!あの、レッド!」



200825 /// 虎杖と宿儺
やわらかな寝息とあどけなさの残る横顔。同じベッドで眠り、そして目覚める度に、彼が何をしたのだろうかと思う。ふつうの、本当にごくふつうの少年だ。悠仁は、宿儺のもたらした因果にもとより絡め取られていた私とは違う。

「可哀想だと思っているだろう」

伸びた犬歯がのぞく。悠仁の頬にぐっぱりと開いた口がにたにたとわらっていた。

「宿儺」
「お前と近いからなあ。お前とこいつ、何が違うかと言われれば分からないくらいに」

宿儺の言うことは正しかった。
悠仁は宿儺の指を飲み込んだが、私は宿儺の指を飲み込まなかった。けれど私にまとわりつく宿儺の気配にはそんなことは関係なかった。千年にわたり続く呪いは、その事実だけで重く苦しい。

「本当は嬉しいんだろう?偽善者の面はそろそろやめておいた方がいいぞ」

ずっと独りだった。私に近いものは宿儺しかなく、それ以外のものはすべてーー呪霊でさえもーー離れたところにいた。対等でも下等でも、ましてや上等でさえもない。ただ、ずうっと遠いだけだ。

「ははは、わらっているな」

宿儺はそう言って、珍しく自分から静かになった。悠仁の寝息だけが聞こえる。私は、自分がどんな顔をしているのか分からない。


200821 /// 五条
以前までは、どちらかといえばふっくらしている方だった。うるせえデブ、と言うと、ふふふ、と彼女は笑っていた。
ーー幸せそうだなあ、羨ましいなあ。
彼女と、彼女の夫を眺めながらそんなことを思っていた。彼女がおれの母親だったらよかったのに。きいきいと陰で喚くだけの、おれを産み落とした生き物を頭の中で考えて、そしてやめた。

彼女は世話係として夫婦でおれの傍にいた。柔らかい雰囲気の二人で、すごく気に入っていた。
おれはうっとおしいくらいに彼女と彼女の夫のあとをついてまわっていた。

おれが十五になる年に彼女はしんだ。夫から三年遅れてのことだ。彼女は自分で首をくくった。
後を追いたいと何度も泣いていたらしいことを全部がすんでから知った。三年生きた理由は、おれが寂しくないように、五条の家を出るまで傍にいたかったからだという。


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