十途渡屋
https://nanos.jp/ttt0kr/
Top Main Memo Clap Re: 
―春と花と―


雪も降ることを忘れたらしい
春の花が咲き始めていたずっと待って居た春だ
この季節をここまで待ちわびていたのには理由がある
それは春はじーちゃんとばーちゃんが生まれた季節だからだ

この日はばーちゃんを驚かせようと朝早くに起きて裏山へとやってきた
じーちゃんとばーちゃんに僕が春を届けてあげようと
花を摘みいっぱい綺麗を抱えて家に向かう
"喜んでくれるかな…もしかしたらおやつが増えるかも!"
そう思うと家に帰る道程もそう遠く無いように思えた

家に着くと共に元気にただいまを告げた

けれどもお帰りが聞こえない
ばーちゃんは珍しく今日は寝坊なのだろうか?
花を抱えながらばーちゃんの布団に向かう
…やっぱりまだ布団だ

「ばーちゃん?みったんかえってきたぞ?ばーちゃ…」

顔を覗き込むと明らかにばーちゃんの顔色が悪い
何だか息をするのも苦しそうだ

「ばーちゃん?!」

持っていた花をそこらじゅうにまき散らしばーちゃんを揺すった
そうするとうっすら目を開けて小さい声で

"だいじょうぶ"

次に今迄ばーちゃんが"大丈夫"と口に出した時の記憶が頭に巡る

「おばちゃん…!!!」

次には今迄無いくらいの速さで走り出していた

「おばちゃん…!ばーちゃんが、ばーちゃんが…!!!」

少しはなれたおばちゃんの家へ

[ 6/9 ]
[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]