しずかちゃんのバスルーム
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はあーあ。

溜息がエコーする暖かい場所で、俺はなんだかもう眠ってしまいそうだ。ちゃぷん、と水音も律儀にエコーする。


俺はあるとき無人島だった。ヤシの木も湖もない、真っ白の石灰石のような素材でできた胡散臭い無人島だった。美しい球体をした俺は発泡スチロール製の手芸用具にそっくりで、人工物のようにも思えた。
島である間俺は、足立さんは今一体どこでどうしているだろうかとか、カモメになって飛んできてくれればなあとか、そういうことを日がな一日考えていた。緩やかな波に揺られながら、それくらいしかやることがなかったのだ。
しかしそんな生活も長くは続かなかった。俺はある日急激に上がり始める水域と、それについていけない自分に気づいた。
――俺は沈もうとしている。
気付いた時にはもう遅かった。本来球の半分も濡らさない海水が、俺の三分の二ほどをすっかり沈めていた。波は恐ろしいほどの穏やかさで俺を飲み込んでいく。

ちゃぷん、ちゃぷん。

悪夢のような水音が鳴りやまない。俺の起源が俺を殺そうとしているのがありありと分かった。海が波が襲い掛かってくる。もう口のあたりまで水が溢れて今にも溺死しそうだった。無人島なので誰も悲しまないのが幸いだ。

たぷん、と開いた口に塩辛い海水が雪崩れ込んできた。

これではもう逃れようがないなと俺は目を閉じて、来世は潜水艦になりたいなあと思った。そしてドラえもんのいつかのお話みたいに足立さんの胃の中に潜り込んで、ちゃぷんちゃぷんと溶けてしまいたい。
そうしてその次に、天使になりたいなあと、俺は思うのです。思うのです。


はあーあ。








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