午後21時5分、夜景の見えるレストランにて


「うわぁ…ほんとに夜景の見えるレストランだぁ…このビルたか〜い…お外がきれ〜〜い…」

「語彙力を捨てて来たのかお前は…。外ばかり見てないで食事しよう。んん…このスズキのポワレ美味いな…!」

「え、どれどれ〜。んんん!ほんとだ美味しい!この皮のカリっとした食感がたまんないな〜!」

「味付けはシンプルにオリーブオイルとバター…それから醤油か…。これなら家でも簡単に作れそうだな。トマトとにんにくをベースにしたソースを添えても味が引き立ちそうだ」

「ハ!?なにそれ絶対美味しいじゃん!?私にも食べさせろよぉ!!」

「ははは、なら次は僕の家で食事デートだな。久しぶりに腕を振るってやるよ」

「やった〜!……って、いやいやいや、夜景の見えるレストランの次は家でデートとか!順調に進んでるカップルかよ!!」

「その言葉の通りじゃないか。恋人同士が逢瀬を交わすのは当然の事だろう?まぁ僕達は仕事の立場上プライベートで二人きりで会う時間なんて滅多にないだろうけどな」

「だーからその恋人同士ってやつ!にわかに信じがたいんだけどまさか本気で私の事が好きだとかそういうわけじゃないよね?」

「おいおいお失礼だな…。好きでもないのにプロポーズなんてするわけないだろ?」

「え…じゃ、じゃあなに…つまり冗談でもからかってるわけでもなく降谷は本気で私が好きって事…?」

「ああ」

「い…いつから!?」

「気づいたのは5年ほど前になるのかな…。松田達に言わせてみれば気づくのが遅いくらいだったようだがな」

「はっ!?つまり降谷が気付かなかっただけであいつらはそれ以前から気づいてたって事!?」

「そうらしいな。まったく察しの良い連中だ…。まぁあいつらに言わせてみれば名前に男ができるまで気づけなかった俺の方が鈍いだけらしいがな」

「あ、ああ〜!あの時かぁ!そう言えば彼氏ができたって報告した途端やたらと悪質に絡まれてたような…。え、なに、もしかしてあれが好意の表れだったわけ?小学生かな?」

「煩いな…。こっちもあの時は色々必死だったんだよ。どうやってあの元彼と別れさせようかと徹夜で作戦を練った事もあったっけ…。まぁ幸いすぐにフラれたみたいで元彼にアプローチする作戦も計画倒れになったけどな!」

「おい笑顔で犯罪めいたことを語るな。え〜…もう…待ってよ…全然頭が追い付かない…。でも5年もたってなんで今更?」

「僕だって組織の件に片がつくまで言うつもりは無かったんだよ。けど先日任務中に危うく死にかけてしまってな」

「マジか。まぁあるあるだよねー」

「ああ…絶体絶命でこのまま死ぬかもしれないと悟った時…、お前の顔が頭に浮かんだんだ」

「へ……」

「俺が死んだら名前はどんな顔をするのか、俺がいない世界でこれから名前がどんな風に生きていくのかを想像するととてもじゃないが耐えられなかったんだ。お前の事だから俺がいない世界でも幸せに生きて行けるだろうけど、そんな名前の姿を一番近くで見られるのが自分以外だという事が酷く腹正しいと思った。まだ有りもしないその相手を殺してやりたいと思うくらいにな。組織を崩壊した後だなんて悠長な事は言っていられない。すぐにでも名前に自分のものにしなければいけないと思ったんだ」

「……」

「ははっ、人間も本能は動物と同じなんだなぁと改めて実感したよ。野性動物は絶体絶命のピンチに生殖本能が働くって言うだろう?なんとか命からがらピンチを脱出してから一心不乱でお前の所に駆けつけたってわけだ」

「えっ…それじゃあプロポーズの時の降谷って…」

「風見が居なければあの場で押し倒してただろうなぁ」

「……お、おまわりさーーん!!ごっゴリラが!!野性のゴリラがーーっ!!」

「お巡りさんはお前じゃないか」

「うわっほんとだ…しかもこいつもだよ…。世も末だな」

「確かに僕もあの時はどうかしていたと思うがお前への気持ちは何一つ嘘偽りはない。まぁたまたま5徹目のお前の頭が狂っていたお蔭であっさりとこうして恋人関係になれたんだからたまには本能のままに行動してみるのも悪くは無いのかもなぁ〜」

「にこやかに言うな。まぁポロポーズの理由は1000歩譲って理解できたけど…」

「僕が何故名前を好きになったのかが分からないって言いたいんだろう?」

「それそれ。自分で言うのもなんだけど私女にらしい部分なんて殆ど無いし降谷とだって性別を意識して接した事なんてなかったしさぁ…。それに降谷って、こう、ボンキュッボン!みたいな女の人が好みじゃん?最初から私なんて眼中にないだろうからってこっちも安心してた部分はあったんだけどなぁ」

「は…?」

「え、違うの?」

「その情報、出所は…?」

「松田だねぇ」

「ま、松田〜…!あいつ…!!」

「お、おお…よく分かんないけど死人に口なしだし許してやんなよ」

「分かってる。でも今度アイツの墓前でみっちり説教しないと気が済まないっ…!!」

「憐れ松田…」

「あいつの戯言のせいで5年以上もお前に異性扱いされ無かった事を嘆いていたのかと思うと腹を立てるのも当然だろ!」

「……」

「…なんだよその顔は。いつにも増して間抜け面じゃないか」

「あー…いや、なんか降谷って本当に私の事好きだったんだな〜と…今更…」

「本当に今更だな」

「ですよねぇ…。あのさぁ降谷」

「ん?」

「正直降谷の事異性と意識した事が無かったから恋人とか結婚とかよく分かんないわ」

「だろうな。けどお前は絶対に俺を拒否しない。そうだろう?」

「うわぁ…この勝ち誇った顔腹立つわ〜…」

「まぁこれからじっくり時間をかけて惚れさせてみせるさ」

「自分の顔に感謝しろよ。今の台詞はその整った可愛い面じゃなければ殴られても仕方ないから」

「感謝してるとも。この顔のお蔭で簡単にハニートラップも成功するわけだしな。おっと、先日の任務中に色仕掛けで失敗したばかりのお前の前で出す話題じゃなかったか」

「やっぱ今の話全部なしで」


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