美的感覚
「再提出…う、うそだ…」
「ん?なぜスケッチブックを眺めているのだ?」
「と、東堂〜…聞いてよ!美術のデッサン図の宿題が再提出で返ってきたんだよ!?美術の先生厳しすぎない!?」
「それはなんと…たしかあの先生は優しい事で有名じゃなかったか?」
「けど現に突き返されちゃったし!!ったくもー部活で大変だって言うのに居残りなんてやってらんないよ!」
「お前いったいどんな絵を…」
「こんなの」
「ってギャアアアアア!!!わっああっあああああーー!!」
「え、なに!?どしたの東堂!?」
「どうしたんだ二人とも、騒がしいな」
「新開!東堂が私の絵を見て急に…」
「絵…?ウ、ウワァアアアア!!!」
「どうしたお前ら、騒がしいぞ」
「み、見るな福!!見てはならんぞ!!」
「いったい何を……あ……う…」
「寿一が倒れた!!おいしっかりしろ寿一!!」
「えっなに!?どういうことなの!?」
「なんなんだあのこの世のものとは思えない地獄絵図は!?あまりにも恐ろしすぎる!!」
「え、ええええ〜!!?そんなに!?そんなにひどい!?倒れるほど!?」
「テメーらさっきからうるせーよ。何ギャーギャー騒いでんのぉ?」
「あ、荒北!!ねえこれ見て!叫ぶほどひどくないよね!?絵見て倒れるとかありえないよね!?」
「ヒッ……な、なんだよそれ……それお前が描いたわけぇ…?」
「うん。猫のスケッチなんだけど」
「それのどこが猫なんだ!?黒々として渦を巻いていて…ああ思い出すだけでもおぞましい!」
「えっ…うそやん…私的には超可愛くかけたつもりだったんだけど…」
「ま、まあなかなか抽象的手で悪くないんじゃないか…」
「無理すんなって新開ィ。ありゃマジでやべーって」
「わ、私ってそんなに絵下手だったんだ…昔からお前は美術に向いてないってさんざん言われてたけどまさかここまでとは…」
「確かにこれでは美術の教師も突き返したくもなるな…」
「どうしよう〜!!また一から書き直さないといけないんだよ!?どう描いたって上手くできるわけがない!!」
「いやこうなる方がすげえって…。絵なんて見たまんまかきゃいいだろが」
「見たまんまねえ…そうだ荒北、モデルになってくんない?」
「はあ?」
「東堂でもいいよ!そういうの好きでしょ」
「い、嫌だ!!こんな絵のモデルだなんて呪われでもしたらどうする!!」
「失礼な!!もういいよ!可愛い後輩達に頼むから!!」
「上下関係の物言わせんのかよ。ひっでぇ先輩だな〜オイ」
「なんとでも言え!あ、黒田〜!ちょっといい?」
「あ、苗字さん…どうしたんすか?」
「えっとね、実は黒田に絵のモデルになってもらいんだよ」
「おっ俺が絵のモデル、ですか…!?」
「うん…ダメ?」
「だ、ダメとかそんなんじゃないっすけど!まぁ俺なんかで良いんなら…」
「っしゃーーーー!!ありがとう黒田ーー!!さっすが時期ツッコミは話が分かるね〜〜!!」
「ちなみに名前チャンが描いた絵これな〜黒田」
「ぎっギャアアアアアア!!!あっああああああーーー!!!」
「えっ、ちょっと黒田ーーーー!?なにすんの荒北ァ!!黒田逃げちゃったじゃん!?」
「ケッ。逃げるようでモデルなんか務まるかよ!」
「うっ…どうしよう…このままじゃ宿題提出できずに美術の成績も最悪になっちゃうよ…」
「こんにちは〜。さっき黒田さんが叫びながら走って行きましたけど何かあったんですか?」
「こっちに来るでないぞ真波。お前には刺激が強すぎる」
「え?どうしたんですか名前先輩、なんか沈んだ顔してますね〜」
「ま、まなびぃ〜〜〜…」
「いったいなにが…あれ?これ名前先輩のスケッチブック?」
「近づくな真波!!」
「そいつぁまじでやべえしろもんだぞ」
「どれどれ…うわぁ!!可愛い猫の絵!これ先輩が描いたんですか!?上手いな〜!」
「「「「「………え???」」」」
「この黒くてとぐろを巻いてるあたりとか抽象的ですごく良い!!生きてるって感じしますよこれ!!」
「ほ、ほんとに!?」
「ほんとですよ!この絵僕にくれません?部屋に飾りたいな〜」
「ま、真波ぃいいいい〜〜〜!!!」
「うわっ!あはは、先輩から抱き着いてくれるなんて珍しいですね!やったぁ!」
「ええ子や〜〜ええ子や真波ィ―――!!そんな絵でよければ何枚でもあげるよ!!あとついでに私の絵のモデルになってよ真波!!」
「モデル!?やるやる!」
「マジかよ真波…」
「とんでもないセンスの持ち主だな…」
「信じらんね〜ぜ不思議チャン…」
「俺は…弱い…」
「ありがとう真波!!大好きだよ〜〜!!!」
「「「「えっ」」」」」
2016.4.25