東堂ファンクラブと
「こんにちはー。東堂居ますかー?」
「あ、苗字ちゃんだ!東堂様〜!苗字ちゃんが呼んでますよ!」
「おお名前!俺の教室まで来るとは珍しいではないか!さては俺に会いたくて仕方が無く来てしまったのだろう!!」
「ははは、面白い冗談だねデコッパチ!」
「デコッパチ言うな!!」
福富からの業務連絡が伝える為に昼休みに東堂の教室まで足を運んだ。
普段私の教室から離れてる東堂のクラスまで来る事は滅多にないから少し新鮮だ。
っていうか相変わらず女子に囲まれてるなぁこいつ…確かに自転車に乗ってる時はかっこいいけど普段はこんなアホだしこれのどこがいいんだか…。
「…というわけで以上が連絡事項ね」
「うむ、分かった。わざわざすまんな」
「いえいえ、これも仕事ですから。そんじゃ私帰るわ」
「もう帰るのか!?少し待て!!ここで俺と世間話でもしようではないか!」
「はぁ?普段部室とかでいっぱい話してるじゃん」
「あれは必ずと言っていいほど周りに誰かが居るだろう!!ふ、二人っきりで話がしたい!!」
「えええ〜…まぁいいか、まだ時間あるし」
少しだけね、と言えばパァっと花が咲いたように笑顔を見せる東堂。
教室からこちらの廊下を覗き見していた東堂ファンクラブの女子がその笑顔にバタバタと倒れていくのが見えた。うわぁ…あの子たち本気で東堂の事好きなんだなぁ…。
「うーん、東堂はやっぱりモテるのか…」
「何を今更!この美形でトークも切れるスリーピングビューティーな俺だぞ?女子に好かれないわけがないだろう!」
「まぁうちの部では一番人気あるしねー」
「そういえばさっき東堂ファンクラブの子がお前を親しげに呼んでいたが友達なのか?」
「ああ、うん。東堂ファンクラブの子たちはよくレースとか見に来てくれてるし自然とね」
「ほぉ……なぁ名前、前々から気になっていたのだが…俺のファンからの嫉妬による嫌がらせのようなものはないのか…?」
「は?あるわけないじゃん。東堂ファンクラブの子たち皆良い子だし」
「それは分かっているが…なんてうかこう、俺と仲良くしていて勘違いする女子も多いだろう!!」
「勘違いって何を」
「だ、だから俺とお前とがだな…!!ええい男の口からそんな事を言わせるな!!」
「乙女か!!いやまぁそういうのは無きにしもあらずだけど東堂のファンクラブの子たちとはわりと仲いいよ?そうそう、この間も私に差し入れくれてね!年下の子だったんだけど緊張した感じでクッキー受け取ってくださいって言ってくれてすごく可愛かったよ〜!それを見た他の子たちが私も私もって色々お菓子とか差し入れしてくれるようになってね!ほんっと東堂ファンクラブの子たちって良い子ばかりなんだから!大事にしなきゃだめだよ!」
「そ、それは重々承知だが……えっ…いやお前…それって仲が良すぎやしないか?俺だってそんなに差し入れを貰った事は…」
「東堂は選手だし栄養管理もあるからお菓子の差し入れは控えてるんだよ。ほら、いつも荒北とか新開にに煩く叱ってるでしょ?」
「なるほどそうか…俺はてっきりファンクラブの子たちがお前に…」
「あーー!名前ちゃんだぁ!!」
「あ、ファンクラブの皆さん…」
「苗字先輩!あの、この間は貧血の所を助けてくれてありがとうございました…!これ、実習で作ったので食べてくださいっ!!」
「ずるーい!!私も!私もこれ作ったんです!!受け取ってください名前先輩!!」
「ちょっとぉ名前ちゃんが年下に弱いからってでしゃばらないでよ一年!名前ちゃん、今度私と一緒に帰ろうよ!」
「うーん、でも私自転車通学だからなぁ…それに練習が終わってからじゃ遅くなるよ?女の子が狙われる遅くまで学校に残ってるなんてダメだよ。変質者に狙われるかもしれないからさ、皆可愛いんだし」
「「「キャーッ!!」」」
「……」
「あれ、どうしたの東堂。あんたのファンクラブの子たちってほんっと良い子達だよね〜。こんな子たちに好かれてるなんて恵まれすぎだよ。少しはありがたみってもんを感じた方が良いんじゃない?」
「………うん…そうだな…」
2014.5.11
おまけ
「なんなのだあの女子にモテようは!!」
「名前は昔から女子にモテるからな〜。年下と女の子には甘いだろ?だからだよ」
「しかし普段からああではないだろう!!何故だ!!」
「そりゃ俺達が同じクラスで行動も一緒にしてたら女の子も男も近寄りがたいだろうからな。なぁ靖友」
「しらねーよ!!」
「ほら、こんな風に威嚇してりゃ誰も寄りつかないだろ」
「なるほど、荒北が番犬をしているなら安心だな」
「ア゛ァ!?」
「なになに、何の話〜?」
「靖友が番犬だって話だ」
「なにそれ。荒北犬になりたいの?」
「ハッ!?ちげーよブス!!」
「最近は猫派だもんね〜」
「黙ってろヨ!!!」