手作り


「あ、そうだ。はい、これ福富に差し入れ」


鞄から取り出したタッパーを福富に差し出せば鋭い目を丸くして数回瞬きをした。
鉄仮面の異名を持つ程表情が分かりにくいけど福富が驚いている…中学から付き合いのある私には分かる!!
その様子にニヤニヤと笑っていると、ベンチに寝転がり雑誌を読んでいた荒北が文句あり気にタッパーをジロジロと睨みつけた。


「ハァ〜?お前が福チャンに?」

「うん。昨日の夜頑張って作ったんだよ」

「ヒュウ!羨ましいぞ寿一!俺の分は無いのか?」

「今回は福富限定ですよー。空けてみてよ!」

「ああ……こ、これは…!!」

「じゃじゃーん!林檎のシフォンケーキです!!」

「実に美味そうだ…!!」

「でっしょー!?シフォンケーキは初挑戦だったから福富に味見してもらおうと思って!!」

「テメー福チャンを毒見役にしてんじゃねえよ!!」

「誰が毒だコラ!!」

「なんだなんだ、名前の手作りか!?俺にも分けてくれ福!!」

「東堂みたいなお坊ちゃんの口には合わないって。これは福富への差し入れだし」

「なぬっ!?福だけずるいではないか!!俺にも差し入れをしろ、名前!!」

「へいへいまた今度ね」

「早速一ついただいてもいいか?」

「うん!じゃんじゃんお食べ!!」

「ああ…。……う…美味い…!!」

「ふ、福チャンの鉄化面が崩れた、だと…!?」

「幸せそうな顔してるな寿一!」

「ぐっ、羨ましいぞ福!!名前、今度俺にも作ってきてくれ!!俺は和菓子が好きだぞ!」

「難易度たっかいな!?」

「俺はおめさんの作ったもんならなんでも食うぜ」

「ヒュウ!!さすが新開イッケメーン!!」

「昔チョコケーキ作ってくれたよな?アレも最高に美味かったぜ(バキューン)」

「グハッ!!射抜かれた…また作ってくるよ!」

「ケッ、どうせお前の作ったもんなんて不味いに決まってんだろ」

「うわウザッ!!次に何か作ってきても荒北にはあげない!!」

「こっちから願い下げだブス!!」

「素直じゃないな靖友。名前の作った料理は本当に美味いんだぞ?」

「何でお前がそこまで知ってんだよ」

「弁当を作って来てもらったことがあるからな」

「なっ…!」

「パワーバーばっか食べて栄養バランスが悪いから少しの間お弁当作ってあげてたんだよ。そいや荒北も細いしペプシばっかで栄養片寄ってんね。お弁当作ってこようか?」

「作ってくれんのォ?」

「名前!!俺にも頼む!!」

「東堂はファンクラブの子たちに頼めばもらえるでしょ」

「ぐっ…!お、俺はお前の作った弁当が食いたいのだ!!」

「荒北〜、嫌いな食べ物とかある?」

「…ピーマン」

「子供か」

「っせーよ!!」



2014.4.24
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