夜の嶋田マートにて


「あっ!!あ、あの!この間は差し入れあざっした!!」

「あれ、君は確か…バレー部の子か!」

「はい!山口忠と言います!」


深々と頭を下げたそばかすの男の子。どこかで見たと思ったらこの間差し入れ持って行った時に居た子だったのか〜。
それにしても今は夜も遅いしこんな時間にスーパーに用でもあるんだろうか。


「あ、あの…嶋田さんは居ますか?」

「え、嶋田君?ってあの嶋田誠くん?」

「はい、たぶんその人です」

「ああそっか。嶋田君OBだもんね。今事務所に居ると思うけど呼んでこようか?」

「い、いえ!!ここで待ってます!!」

「そっか。あ、そうだ。お腹すいてない?」

「減ってます…あ!いやその…!」

「あはは。部活帰りだし育ちざかりだもんなぁ。ちょっと待ってて」


手早く閉店作業を片づけ更衣室のロッカーに向かい自分の荷物の中からお菓子を取り出す。
先日嶋田君のおばさんに落花生を沢山お裾わけしてもらったからそれを使ってパウンドケーキを作ってみたのだ。
仕事が終わったら嶋田君に食べてもらおうと思ってたけど腹を空かせた少年を見ちゃあほっとけないよねぇ。


「やまぐちくーん!はいこれ!こんなんじゃ腹の足しにならないかもしれないけど!」

「え…いいんですか?」

「いいよいいよ〜沢山じゃんじゃん食べな!!」

「はい!いただきます!」


甘いものが好きなのか包みを広げてあげるとキラキラと目を輝かせた。
食べっぷりも良いし良いなぁ高校生は。青春ですなぁ。


「美味しい?」

「はい!めちゃくちゃ美味いです!!」

「なら良かった〜。久しぶりに作ったから不味かったらどうしようかと思った」

「これ手作りですか!?」

「そだよー」

「お店で売ってるやつかと思いました!ほんとに美味いです!」

「山口君は良い子だなぁ〜!!」

「うわっ!ちょっ、撫で…!!」


ぐりぐりと頭を撫でると照れくさそうに頬を染める。
可愛いなぁ高校生…!!私がこの年齢の頃ってもうちょっと生意気だったような気がするわー。ちょっと思いだしたくない黒歴史だね。


「忠に苗字さん!?こんなとこで二人で何してんだ!?」

「嶋田さん!」

「あ、お疲れ様〜嶋田君。山口君が嶋田君に用があるってさ」

「おおそうか、今日は練習の日だったな。ってか名前さんはなんで忠の頭撫でてるわけ?」

「ハッ…違うからね!!山口君が最近の高校生にしては素直で可愛い子だなぁと思ったら思わず手が出ちゃっただけで決して犯罪ではないよ嶋田君!!」

「思いっきり暴露しちゃってんよ…。はい良いから手を離す」

「へい」

「ごめんな忠、遅くなっちまった」

「いえ!お仕事があるのに無理言ってすみません!」

「そんな事気にすんな。てかなんか美味そうなの食べてるなぁ忠。それなんだ?」

「あ…これは…」

「私が作って持ってきてた落花生入りのパウンドケーキ。仕事が終わったら嶋田君に食べてもらおうと思って持ってきてたんだけど山口君がお腹空かせてるから彼に食べてもらう事にしたんだよ」

「ほぉおお〜う?名前さんの手作りを俺より先に忠が〜?」

「んぐっ!?ゲホッ!!の、喉に詰まっ…!!」

「うわ、大丈夫!?水水!!って私の飲みかけしかない!これじゃ嫌だよね!?」

「いや忠にはこのオッサンの飲みかけの水をやろう。良いよなぁ忠〜?」

「…!!(コクコク)」


少し怒りを感じるニヤニヤ笑いの嶋田君からペットボトルの水を受け取り勢いよく流しこんだ山口君はハァーっと安堵のため息をつく。
なんかこの二人仲いいなぁ〜。歳の離れた兄弟みたいだ。
それにしても山口君はどうしてこんな居時間にOBを訪ねて来てるんだろう。さっき練習がどうとか言ってたけど何か教えてあげてるんだろうか…。
どっちにしろ私が首突っ込む事じゃないかな。男同士の事に女が横入りするもんじゃないよね。


「それじゃあ仕事も終わったし私そろそろ帰るね」

「お、もうこんな時間か。待って苗字さん!遅いし送ってくから!」

「大丈夫!今日は自転車で来てるし!その分しっかり山口君の練習見たげてね!じゃあまたね〜山口くん!」

「は、はい!!ごちそうさまでした!!」

「はぁー行っちゃった……なんかいちいちかっこつかないんだよなぁ俺…」

「あ、あの…なんかすみませんでした…」

「お前は気にすんな。んじゃ今日も練習するか!」

「はい!!」



2014.7.9
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -