「うわ、雨だ……」
放課後に行われた委員会の会議も終わり昇降口に出ると雨が降り始めた。
鞄に入れていた折り畳み傘を広げいつもは真っすぐ歩く校門までの道を横切り体育館の方に足を進める。
…まさか及川君と一緒に帰る日が来るなんて思いもしなかった。
ほんの数日前までただのクラスメイトだった人物が恋人になり一緒に下校しちゃうなんてなんだか気恥ずかしいというか…。
足を向けた体育館からはまだ練習をしているのかバレー部らしき掛け声が聞こえてくる。
部室塔の近くで待ってるように言われたけど色んな部の人達の出入りが多いから目立つなぁ…まだ練習終わってないみたいだしどこか静かな場所で本でも読んでよう。
「あれ、苗字じゃん」
「松川君。久しぶりだねー」
後ろから掛けられた声に振り返れば見知った姿に少しホッとした。
松川君とは去年同じクラスで席も近かったからよく世間話なんかをする仲だ。
そう言えば松川君もバレー部だったか。と言う事は及川君のチームメイト…。
「だな。お前ここで何してんの?」
「うーんと…ちょっと人を待ってるって言うか…」
「ああ、及川か」
「は!?な、なんで松川君が知ってんの!?」」
「だって及川から聞いたし」
「えええええ!!お、及川君部員皆に話してるの!?」
「そういうわけじゃねえけど。まぁ前からいつもお前が可愛い可愛いつってヘタレてたし付き合うことになったって岩泉にでけえ声で報告してたから部員は誰でも知ってるだろうけどな」
「うっ、そぉおおおお!!色んな意味でびっくりだよ!!?」
及川君が私の事可愛いとか言って事やら以前から部員に知られてた事やら岩泉君に逐一報告していたであろう事やら色々驚きすぎてそれ以上言葉にならなかった。
ニシシと楽しげに笑う松川君に笑うなと睨み上げると怒るな怒るなと頭をポンポンと叩かれる。
絶対面白がってるよね松川君……!!!
「ちょっと!!なにしてんの!!」
「あ…及川君」
「及川今上がりか?」
「うん、ってそうじゃなくて!何苗字さんの頭撫でてんのまっつん!!離れて離れて!!」
突然及川君の声が聞こえたかと思えば私の頭上にあった松川君の手が及川君によって離された。
今練習が終わったらしい及川君の後ろには彼の幼馴染の岩泉君の姿も見える。
「男の嫉妬は醜いぞ〜及川」
「口挟まないでよ〜岩ちゃん!!もぉ〜!苗字さんも何簡単に頭撫でられてんの!!」
「え…松川君だし、べつに気にするような事でもないんじゃ…」
「男にホイホイ触られてちゃダメじゃん!!」
「おい及川、その辺に…」
「まぁ岩泉、ちょっと見とこうぜ」
「あ?」
「ほ、ホイホイって……尻軽女みたいに言わないでほしい、です…」
「そ、そんな風に言ったんじゃないよ!いくらまっつんでも男なんだから警戒しなよって言ってんの!」
「…ごめんなさい……で、でも松川君は元クラスメイトだし…」
「じゃあ現クラスメイトの俺が撫でてもいいわけだよね!?そういうことだよねえ!?」
「撫でるくらいべつにかまわないけど……」
「………え…いいの?」
「えっと…良いも悪いもないんじゃないかなぁ…」
「じゃ、じゃあ………ってこんな人前じゃ恥ずかしくてできるわけないじゃんバカ!!」
「ええええ…」
「な、面白いだろ岩泉。こいつらくっついたらおもしれえことになるだろなって思ってたんだよなぁ」
「余裕なさすぎんだろ及川……」
2015.1.14