「へえ〜…なんか女の子っぽいお弁当じゃん」
「あ、はい、どうも…」
及川君につれられて屋上へやってきた。
お昼を一緒に食べようと言われた事にもびっくりだけどまさか屋上で食べることになるとは…。
これぞまさしく青春だよ!意外とベタなの好きなんだね及川君!
な〜んて意外な一面に感心しつつお弁当をつついてるんだけれども……。
「……あのさ、」
「え?」
「い、いい天気だよね!今日!」
「そ、そうですね!」
「………」
「………」
……ま、間が持たない…!!
どうしようこの空気…自慢じゃないけど私今まで誰かと付き合ったこともないから緊張で気の効いたことも言えないよ…!!
及川君は普段お喋りな方なのにさっきからあんまり喋らないし…やっぱり私の事嫌いじゃないの?だったらなんで告白を…って、ああもう!頭こんがらがってきた!
「どうしたの苗字さん、全然箸進んでないけど」
「う、ううん!なんでもないよ…!」
「…何か俺に言いたい事があるとか?」
「あー…うん…」
「…なんで自分に告白したかって事でしょ。大した接点もないのに及川君みたいなイケメンが自分に告白するなんてありえな〜い、とか」
自分でイケメンと言いおった…。
だけど私の心を覗いたみたいにズバリと的確に言う及川君に申し訳なさで胸がいっぱいだ。
この感じからすると私が及川君の事が好きで告白を受けたわけじゃないって事も分かってそうだなぁ…。
「うん、その通りです…ごめんね」
「謝んなくて良いよ。俺がいきなり一方的に言っちゃったんだし。あの時はいって返事したのも咄嗟に言っちゃったんでしょ苗字さん」
「…おっしゃる通りです…申し訳ありません……」
「ってそんな頭下げなくてもいいから!腰低すぎでしょ!!」
「だ、だって及川君みたいな女子にもモテてバレーも一生懸命な人に失礼な事しちゃったし…!!」
「失礼とかないから!あーもうお弁当冷めちゃうから早く食べなよ!」
「お、お弁当は最初から冷めてるよ……」
「う……」
「えーっと…それで…なんで及川君は私なんかに告白したの?」
「………そんなの好きだからに決まってんじゃん…」
「……………は……!?!」
「そりゃ接点は無かったけどさ。苗字さんの事は前から見てたし…良い子だなって思って……」
「え、えええええ!?及川君が!?私を好き!?はぁああああ!!?」
「ちょっ、そんな大声で言わないで!!恥ずかしいから!!」
「だ、だって!!そんなのあり得ない!!だって私ですよ!?なんの取り柄もないし顔も親にまでTHE普通と称される私だよ!?イケメンで人気者の及川君が私を好きになるなんて、そんな……なんで…!!」
「理由なんていらないし………好きになったから好きなだけだもん」
だもんって…ええええ〜…。
その言葉が信じられなくて及川君をじっと見つめると顔を赤くし不貞腐れたようにそっぽを向く。
なんだか思ってたより子供っぽいなぁ及川君…いつもはイケメンオーラ出してるのに…ってそうじゃなくて。
及川君が私を好きって…いやいやそんなぁ…だけど嘘をつく理由も見当たらないし、何度も言うけど及川君は冗談こんな事を言うような人じゃない…と思う。たぶん。
まさか本当に私の事が好きで告白してくれたのかな…だとしたらあんな成り行きみたいな生返事をしてしまった事に益々罪悪感が沸いてきた。
「及川君」
「………なに」
「ごめんね、昨日はあんな返事しちゃって」
「…いいよ。咄嗟に返事しちゃったんだな〜って分かってたし。それでも気付かないふりして付き合うように仕向けたのは俺なんだからさ」
「う、うん……でも私、及川君の事は……」
「分かってるってば。俺の事好きじゃないんでしょ、恋愛的に。でも今好きな人とかもいないんだよね?……苗字さんが良ければ君に好きな人とか彼氏ができるまで俺と付き合ってよ」
「そ、そんな事できないよ!」
「咄嗟の事とは言え返事したんだもんね〜、ちょっとくらい責任とってもいいんじゃない?」
「……お、及川君って良い性格してるね…!!」
「酷い!俺は純粋無垢な心の持ち主だよ!」
「純粋無垢って……」
「俺が嫌なら早く好きな人なり彼氏なり見つければいいんじゃない?まぁそれより先に俺を好きにさせてみせるけどさっ!!」
「……及川君、真っ赤な顔で言われても迫力ないよ……」
「う、うるさーーい!!」
2015.1.14