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「え……何この状況…」

「あ、及川君。いらっしゃい」

「うん。ってそうじゃなくてね苗字さん。なんなのこの状況」


今確かに目の前で図書室の椅子を並べて横たわっているいるのは自分の後輩の国見ちゃんだ。
国見ちゃんはよく眠る子みたいだしいつも人が少ない図書室で寝るのは別に構わない。構わないけども。
枕代わりに頭を乗せているその膝はの持ち主は誰だか分かってる?
なんで先輩の彼女に膝枕してもらって堂々と寝てんのこの子。


「く〜に〜み〜ちゃーん……!!」

「及川君静かに。国見君起きちゃうから」

「叩き起こす!誰に許可とって苗字に膝枕なんてしてもらってんの!?俺もまだして貰った事ないのにさ!!」

「いや、私の膝なんてそんなたいそれたもんじゃないからね」

「たいそれたものなんですぅーー!!苗字さんもなんで易々と膝貸しちゃうの!!」

「だって国見君が机にうつ伏せになって寝ると腰が痛いって…椅子並べて寝るって事になったけど枕がないと痛いだろうからさぁ」

「…前から思ってたけど苗字さんって国見ちゃんには甘いよね…」

「まぁ…国見君可愛いし放っておけない感じがあるでしょ」


年下ってつい甘やかしちゃうんだよ、と困ったような笑顔を浮かべる名前ちゃんも可愛くて、うっと言葉に詰まる。
ったくもう…いくら年下でも男相手に警戒心ゼロなんて、冷や冷やさせられるこっちの身ににもなってほしいよ。
そういえば猛もやたらと名前ちゃんに懐いてたし年下に好かれやすい性質なのかも…。
優しいお姉さんって感じだもんね。
今すぐ叩き起こしてその場所変われと言いたいのは山々だけど、余裕のない男だと思われたくないしここはぐっと我慢しよう…。
名前ちゃんの隣に座ってだらしなく机に体を預ける。図書室って静かだから眠くなっちゃうな。


「国見君って髪の毛サラッサラだよね…いいなぁ」

「だね。俺なんか毎朝寝癖直すの大変なのに」

「及川君はふわふわだもんね。そっちも羨ましいな〜。私はどっちつかずって感じだし」

「雨の日とか大変だよ〜?もうくりんっくりんになっちゃってね」

「おお…それは大変そうだね…でもちょっと見てみたいかも」

「うわ、意地悪だ。もう及川さん拗ねちゃうからね」

「ごめんごめん」

「ゆるませーん」


名前ちゃんが持っている本を取り上げ空いた手を取り指を絡める。
以前よりこうしてスキンシップをとることが多くなってきた。
まだちょっと恥ずかしくて触れてる間は顔をそむけちゃうんだけどさ。
好きなのに素直になれなかった俺としてはこうして自分からスキンシップできるようになれただけでも大進歩なんだけどね。
伝わってくる体温が暖かくて幸せで、だけどドキドキして。
俺はもっと触れ合っていたいんだけどな。名前ちゃんはどう思ってるんだろう。
自意識過剰かもしんないけど俺の事少しは好きになってくれてると思うんだけどな…。
俺はと言えば前よりもずっと名前ちゃんの事が好きになってる気がする。
苗字ちゃんの照れてる顔や怒ってる顔とか、今までに見たことのない彼女を見る度に嬉しくて…優しい笑顔を向けられる度に好きだという気持ちが増していく。

…ねえ、早く俺の事好きになってよ…名前ちゃん。



2015.1.26



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