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恋ってどんな気持ちなんだろう。



「名前さぁ、及川の事好きになってきてるでしょ」

「………は…?」


友人から突然告げられた言葉に思わずすっとんきょな声が出る。
…え?今なんと言いました望さん…?私が及川君を好きになってきてる…?


「なにアホ面してんの。見てれば分かるって。最近よく及川の事見てるでしょアンタ」

「えええ…うそ…いやそんなこと…」

「あるでしょ?」

「はい、ありますその通りですつい気になって目で追ってますごめんなさい…」


くっおおおぉおお…恥ずかしくて顔から火が出そう…!!
そうですよその通りです!なんかつい気になって見ちゃってます…!!
だけどそれが好きになってるかって言われるとよくわかんないんだよね…。
恋多き女子高生の身でこんな事言うのはあれだけど、私あんまり恋愛経験もないし前回誰かを好きになった時って小学生時代だよ。しかも相手は先生だ。
そんな風に恋愛経験に乏しく恋をする気持ちさえ忘れてしまっているんだか知らないままなんだかも分かっていないような私なんだよ…。好きかどうかなんて分からない…。


「練習とか見に行ってんでしょ?」

「うん、一度だけ…」

「ぶっちゃけさ、あんた及川の事どう思ってるわけ?」

「どう、とは…」

「喋ったり一緒に居て及川の事どんなふうに思うとか」

「うーん…最初は及川君が私に冷たいのは怒ってるからだとか思ってたから怒らせないように冷や冷やしてたなぁ…。今は照れ隠しだって知って可愛いなと思ってる…あとバレーしてる姿が綺麗」

「はぁ?綺麗はともかく及川が可愛いって…あんた趣味悪いわ…」

「だってほんとに可愛いんだよ!及川君の言動には驚かされることばかりだけど…。普段他の人に前では笑顔ふりまいててる及川君が私の前では拗ねたような顔してデレてくると、こう、胸のあたりがむぉおおおってなるんだよね…」

「…なんか惚気に聞こえるんだけど…」

「……いやいや、ないって、ないない…」


じとっとした目で私を見る望ちゃんに頭を抱える。
そんな顔されたって分かんないものは分かんないんだってば…!!
世の恋してる人たちってどんな気持ちなんだろうなぁ…。
及川君は私を好きだって言ってくれたけど、好きになったきっかけとか教えてもらってないし…。そもそも接点なんて殆どなかったんだもんね…。

ちらりと及川君に視線を向ければクラスの男子と楽しげに話をしている。
つい最近まではただイケメンだな〜綺麗だな〜と思う程度だったのに、今は私の前ではツンデレだったり優しく接してくれてるんだと思うと何とも言い難い恥ずかしさがこみ上げてきた。
うーん…どうしてくれようこの気持ち…。


「あ…」

「どうしたのー望さん」

「ああ、うん…」


望ちゃんにしては珍しく歯切れの悪い返事だ。
不思議に思い彼女の視線の先を追うと教室の後ろの扉に年下と思われる可愛い女の子がきょろきょろと中を覗き込み誰かを探しているようだった。


「あ、徹君!」


不安そうだった顔は目的の人物を見つけるとパッと花が咲いたように笑顔へ変わる。
パタパタと小走りで駆け寄った先では及川君が呆気にとられたような顔をしていて、なんだかまるでドラマのワンシーンを見ているような気持ちになった。
…及川君のファンの子かな…それにしては及川君の反応が薄いというか…。
会話をを一言二言交わし、及川君には珍しく笑顔の薄い表情で女の子を連れて教室を出て行ってしまった。
去り際に一瞬目が合ったような気がしたけど、すぐに視線を逸らされてしまった。


「…あの子、及川の元カノ」

「…え…。そう…なんだ…」

「私らがまだ二年の時に付き合ってた子だけどね。今更何の用があるんだか知らないけど…」


元カノかぁ…。まぁ居てもだよね、こう言っちゃなんだけど及川君女の子とっかえひっかえしてたみたいだし…。
私が気にするような事じゃない……とは思うんだけど…。んんんん、なんだろこのもやもやする感じ…。



2015.1.23



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