△ アリビンゲーブ 19
意識はまだあった。
だけど、体が思うように動かせずに時折ひきつけを起こしたかのようにびくりと痙攣する。
そんな私を見て、兵長はゆっくりと顔を放す。
「…はぁっ…」
やっと自由にされた口から息を吸い込み、とろりとした瞼を持ち上げた。
…兵長が口を放してくれていたら息苦しさももう少しましだったんじゃないだろうか、と冷静に考えてしまう。
ふいに彼の手が伸びて私の汗ばんだ額を撫でる。
この場面だけ見れば誰でも恋人同士だと錯覚してしまいそうだ。
「…お前は力を抜く、という意味が分からねぇみたいだな。」
いつもの無表情で呟かれても不思議と怖さは無かった。
そのまま彼の手は下へ降り、シャツのボタンを掛け合わせ、乱れを直してくれる。
この時々の優しさのようなものは一体何なのか。
私には知る由もない。
「今日はもういい。戻って寝ろ」
そう言うとベッドから降り、シャツを脱いで浴室へと入っていった。
一人残され一瞬呆気にとられるが、この切り替えしの速さも彼の特徴なんだろう。
浴室から水音が響いたのを確認して身を起こす。
そういえば、
私ばっかりで彼はいいのだろうか…。
ぼんやりとした頭で疑問に思っていたが、だからといって私から何か出来るわけでもないので頭を奮い立たせ、部屋を後にした。