「うわぁ」
「………あ、ごめん」
急に腕を引かれて抱き留められた。
吃驚して誰か確認するように見上げると、降谷くんだった。
「ふ、ふるやくん…?」
「なんか…抱きしめたくて」
「え」
「嫌だった?」
「え、あ、…嫌っていうか…」
ほんとビックリというのが本音で不思議とそれ以外の気持ちは浮かんでこなくて、今になってじわじわと恥ずかしさがこみ上げてきた。
「みょうじさん、ふわふわしてる」
「えっと…どういうことかな?」
「ずっと抱きしめていたい」
私の頭にすりすりと頬をすり寄せているんだろう降谷くんは、いい匂いもする、ときもち嬉しそうな声色になって、なんだかむずがゆい。
「あの、誰かに見つかっちゃうよ…?」
「誰かに…?」
「栄純とか…、春市とか…」
「…みょうじさん、僕の下の名前知ってる?」
「え、うん」
「言ってみて」
「さとる、でしょ?」
コクコクと頷く降谷くん。
「みょうじさんは栄純とか春っちと仲良しだよね」
「うん」
頭の上にあった降谷くんの顔が近づいてくる。
まさか、と思っていたけどまさかのまさか、唇を押し寄せられた。
「僕と一番仲良しにならない?」
「んっ…!」
大きな身体とは裏腹に言葉数も少ないし仕草や行動が可愛らしかった降谷くんはどこや甘やかしたくなるって印象だったけど
野球してるときとはまた別な格好良いところを見てしまった気がする。
心臓がうるさいのを隠したくて、降谷くんの胸に顔をうずめた。
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