「失礼します、」
「あ、御幸くん、おつかれさま」
「みょうじ、何やってんの?」
「スコア整理してたの。先週の練習試合のスコアブックほしいんでしょ、はいこれ」
「お、用意いいじゃん。さんきゅ」
「取りに来るだろうなーって思ってたから」
「失礼しまァす!!」
「のあっ」

プレハブに消えて行ったキャップを追って走ってきた。中に入るとキャップはマネージャーのみょうじ先輩と楽しそうに会話をしている。むむむ

「あの!キャップ!球受けてくれませんかね!」
「うるせーな沢村、こんな狭いとこでそんな大声出すなよ」
「はは…今日も元気でよろしいね」
「お褒めに預かり光栄です!!」
「今のは褒めてねーだろ…。」

キャップこと御幸先輩は呆れて笑い、マネージャー手伝ってやれ、球はその後受けてやるよと言ってスコアブックを手にプレハブを出て行った。
軽く締められたドアノブをキチンと締める。

「て…言われたけど、もう手伝ってもらう程でもないんだけどね」
「いやいや、手伝いますよ!!」

そう言ってみょうじ先輩の背中に手を伸ばす。スコアブックの束を受け取って棚の隙間に差し込んだ。みょうじ先輩の背中と俺の胸がくっつく。あ、なんかいい匂いすんな。

「もぉ、御幸先輩がなまえさんと二人っきりなんだもん、ハラハラしちまったよ」
「え?別になんにもないのに」
「いんや、奴は結構色男だからなぁ、なまえさんに色目使うかもしんねーし」
「御幸くんは私のことそんな目で見ないよ…」

あと奴って呼ばないの、と人差し指で頬をぷにっと押される。
俺となまえさんは好き同士だ。野球部で気づいてる奴がいるのかは分からないけど特に何も言われないってことは気づいていないんだと思う。倉持先輩あたりにバレたらいの一番にからかってきそうだし。

「なまえさん、チューしたい」
「だーめ。誰か来ちゃう」

この制止される声が好きだ。
ダメだと言われてもするけどダメだと言われたくて聞いてしまう。
なまえさんの顎を指で撫でて、軽く唇をつける。すぐに離したけど一度じゃ足りなくてもう一度唇をくっつけて、離すときぺろっとなまえさんの唇を舐めた。

「んっ、だめって言ったじゃん」
「いいじゃん、一瞬だし」

にしし、と笑うと恥ずかしそうになまえさんの手のひらが俺の背中を軽く叩いた。

「今日も他のマネさん達と一緒に帰るんだよね?」
「うん、その予定だよー」
「そかそか!じゃあ、気を付けて帰ってください!!」
「ありがとー、栄純くんもちゃんとお風呂入っていっぱい寝るんだよ?」
「はは、母ちゃんみてえ」
「…もう言わない」
「じゃあね、なまえさん」

頭をぽんぽんと撫でて、額に唇をつけた。この誰にも見つからずにこっそり二人きりになる瞬間が好きだ。なまえさんもそうだと思う。
恥ずかしそうに笑った彼女は、ひらひらと小さな手のひらを振った。


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