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水の都グランコクマ。
穏やかに流れる街の大気が普段と装いを変えて、まるで春の嵐のように陽気に廻った。風も人も活気に満ちている。

「すっげえ…!賑わってんなあ」
「ルーク!寄り道しないで行くわよ。誰のせいで遅刻したと思ってるの。こんな大事な日に」

そこにいるだれもが快活よく街を賑わせていた。陽気な音楽が流れる中を盛大に。キラキラと発光する燐粉混じりの煙や空を泳いでいくカラフルな風船は、訪れる人々の胸を昂揚させるのには十分で、思わず駆け出したルークもまたその一人だった。

静止をかけるティアの声も賑わいの中で掻き消される。ルークを連れ出そうと近づく彼女のドレスがふわりふわりと風に凪いだ。そのドレスは当人の妖艶さを引き出して更に艶やかさを増している。

ミュウがルークの肩の上で歓喜の声を聞いて跳ねている。首に緋と金を織り込んだリボンを結んでいて、それが跳ねる度に波うった。チーグルとお揃いの緋と金の筋が混じる黒地の正装が様になっているルークはといえば。黙っていれば品の良さが浮き彫りになるはずのところ、街の賑わいに感化されはしゃぐ姿がそれをいくらか台無しにしている。

あちらこちらに目移りして浮足立つルークを制しながら、ティアはため息ひとつ。時刻を確認する。

「ほら、急いで」

人を掻き分けながらティアは城に向かってルークの手を引いた。


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